便秘で悩んでいるけれども、日々の生活が最優先で、お通じの不具合は後回しになりがちです。

便秘は、それだけでは我慢できないほど辛いケースは多くなく、改善しなくとも命にかかわるわけではない。

生活する上でそれほど障害になっているわけでもないし。

悩みの1つではあるけれども、病院に行くほどのことではないというイメージが先行してしまっているからですね。

でも実は、便秘は隠れた病気の症状の1つかもしれませんし、便秘のせいで死亡リスクが高くなってしまう病気もあるのです。

今回は、最新の研究から明らかになった、便秘と循環器疾患との関係性についてご紹介します。

便秘はどの状態を指すものか

まずはそもそも便秘とはどんな状態のことを指すのか。

便秘の定義はいくつかありますが、ものすごく簡単にまとめると、

  • 便が出にくくて、お腹に溜まった状態が続いて苦しい時
  • 排便があっても出きった感がない時

このような状態の時。

単に2~3日出てないという場合でも、苦しくなければ便秘ではありません

一口に便秘といっても、その原因によって種類がわけられています。

大きなカテゴリーとしては3つ。

  • 生活習慣病が原因
  • 病気が原因
  • 薬が原因

詳しくは、こちらの記事もご参考ください。

便秘でお困りの方の大半は、生活習慣病が原因であることが多いです。

生活習慣が原因の便秘解消は問題ない

その場合の改善方法は、よく知られている

  • 水分とたくさんとる
  • 食物繊維をたくさんとる
  • 睡眠・運動・食事を規則正しく

など、いわゆる生活習慣の改善で解消されるケースが多いです。

でも問題は病気が原因の場合。

便秘の裏には病気が隠れている可能性がある

便秘症状は、隠れた病気の症状の1つである場合があるのです。

たとえば、便秘の症状に対して疑われる病気は、

  • 過敏性腸症候群
  • 腸閉塞
  • 大腸がん
  • 頚椎症
  • 甲状腺機能低下症
  • 低カリウム血症

このようなものがあげられます。

他にもたくさんありますが、気になる方はこちらの記事よりどうぞ。

中でもよく話題になる便秘関連病は、大腸がん、低カリウム血症、腸閉塞

豆知識1:大腸がんとは

大腸がんは、その名のとおり大腸にできるがんです。

日本の死因第1位であるがん、女性に関していえば2011年度のがんによる死亡のうち、大腸がんが第1位でした。

大腸がんは40歳以降に急激に罹患率が高くなります。

早期発見できれば完治可能な病気です。

まずはかからないよう予防を徹底すること、かかったことを早くに発見できるよう検診を定期的に行うことが大事です。

豆知識2:低カリウム血症とは

こちらもその名のとおり、カリウムの濃度が低下してしまった状態のことをいいます。

軽い場合は、力が入らない(筋力が落ちたり疲労感がある)、便秘や嘔吐などの消化器官の異常がおきます。

ひどいと、四肢が麻痺したり呼吸筋の麻痺、不整脈、腸閉塞にもなってしまう病気です。

特にダイエットしていたり、果物や野菜をずっと食べていないとカリウムが不足することがあります。

豆知識3:腸閉塞とは

腸の中の食べ物や消化液の流れが滞っている状態のことをいいます。

医療従事者は、「イレウス」と呼ぶことが多いです。

腸閉塞になると、ひどい腹痛や嘔吐、便秘の症状がでます。

放っておくと腸が破裂して、腹腔の炎症や感染症につながることがあるので早めに治療しないと危険です。

このように、ただの便秘でも他の病気のサインである場合があるわけです。

おそらく他にも自覚症状が出ていることもありますので、そちらから発覚することも多く、独立していると思っていた便秘も実は関連する症状だった、なんてことは珍しくありません。

さて、便秘について基本をささっと紹介しましたが、いよいよ本題に入りましょう。

便秘と循環器疾患との関係性

前項でお話しした、便秘に関連する病気に「循環器疾患」は含まれていませんでした。

便秘と循環器疾患との関連が、それまでの研究では明らかになっていなかったからです。

しかし、2016年3月に発表された論文で、それが明らかになったのです。

まずは循環器疾患とはどんな病気かを簡単に説明していきます。

循環器疾患とは

専門用語っぽく聞こえる方もいると思いますので、まずは簡単にこの病気について。

循環器とは、血液を体に流す(循環させる)ための、心臓や血管などの臓器のことです。

つまり循環器疾患とは、血液を循環させるための臓器の病気です。

聞きなれたものでしたら、

  • 高血圧
  • 心疾患(心臓に関する病気:心筋梗塞、心不全など)
  • 脳血管疾患(脳に関する病気:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
  • 動脈瘤

でしょう。

このうち、心臓の病気である心疾患は日本の死因ランキング第2位

脳血管疾患は第3位です。

循環器疾患は、心臓や脳が正常に働かなくなる病気のため、直接命に係わる疾患が多いのです。

循環器疾患と便秘の関連

では、大体病気を理解いただいたところで、循環器疾患と便秘の関連について紹介していきます。

まず結論から。

発表された論文によると、4日に1回以下しか排便しない人は、1日1回以上排便する人に比べて、循環器疾患で死亡する危険性が約1.4倍になるそうです。

わかりやすく例えてみましょう。

1日1回以上排便する人が100人いたとして、そのうちの20人が循環器疾患で死亡するとしましょう。

でも、この100人が全員4日に1回以下しか排便がない人だとすると、28人が循環器疾患で死亡する予測になるのです。

たった100人の例でも死亡者数に8人もの差ができるのです。

この8人は、便秘を治せば循環器疾患で死亡することはなかったかもしれないのです。

この研究結果はとても注目されました。

4日1回以下しか排便がない人って、めずらしくないからです。

また、実はこれまで、排便頻度と循環器疾患による死亡の関係について調べた研究はありませんでした。

研究の内容

ではここで当該研究について少し概要を。

対象者は、宮城県大崎保健所の管内に住む40~79歳の住民。

この中から、1994年9月から12月まで行われた過去の調査で、循環器疾患やがんなどの病気にかかったことのなかった4万5,112人を選出しました。

その人たちを13.3年間追跡し、その後どんな病気でいつ死亡したかなどを調査しました。

結果、循環器疾患により死亡したのは、4万5,112人中2,028人。

この人たちを死亡と、排便頻度との関係を分析するために、排便頻度によって3グループに分けました。

  • 「1日1回以上」(3万6,158人、男性:52.2%)
  • 「2~3日に1回」(8,119人、男性:31.5%)
  • 「4日に1回以下」(8,53人、男性:27.3%)

ちなみに、この分析結果に影響しそうな要素もあらかじめ調べて、計算の際に調整因子として使いました。

それがこちら。

  • 性別
  • 年齢
  • 既往症(糖尿病・高血圧)
  • 生活習慣(飲酒・喫煙・野菜果物の摂取・歩行時間)
  • ストレスの程度
  • 配偶者の有無
  • 就業状況

わかりやすくいうと、例えば排便頻度と循環器疾患の死亡との関連を知りたいのに、年齢との関連や生活習慣との関連も(計算上)強く、本来知りたい数値が正しく計算できないということです。

そんなこんなで、うまいこと分析した結果、

  • 循環器疾患による死亡リスクは、排便頻度が低下するにつれて上昇する傾向
  • 循環器疾患による死亡リスクは、2~3日に1回のグループでは1.21倍、4日に1回以下のグループでは1.39倍
  • 循環器疾患のうち脳卒中による死亡リスクは、2~3日に1回のグループで1.29倍、4日に1回以下のグループで1.90倍と特に上昇

ということがわかりました。

出典:東北大学大学院医学系研究科医科学専攻 社会医学講座公衆衛生学分野「日本における排便頻度と循環器系疾患死亡リスクとの関連:大崎国保コホート研究」

特に三つ目の脳卒中による死亡リスクが1.9倍になったことも驚きの結果です。

先ほどのようにまた具体的に例にしてみると、

便秘じゃない人が100人いて10人が脳卒中で死亡するとしましょう。

もしこの100人が全員便秘になったら脳卒中で死亡する人数が19人に増えるのです。

この研究は、2016年3月に発表されたもので、発表より1年が経過しています。

もしかしたら、新たな知見が、学会報告レベルでは出てきている頃かもしれませんね。

紹介した論文の書誌情報: Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Honkura K, Tomata Y, Sugiyama K, Kaiho Y, Watanabe T, Zhang S, Sugawara Y, Tsuji I. Atherosclerosis. 2016 Mar;246:251-6. 

おわりに

今回は、便秘と病気の関連ということで、最新の研究から、排便頻度が少ないと循環器疾患で死亡するリスクが上がってしまいますよという研究結果を紹介しました。

4日に1回より排便頻度が少ない方、今すぐ便秘解消へ意識を向けましょう。

特に、研究で対象とした年齢の方、40歳~79歳までの方は特に要注意。

頑固な便秘の方はぜひ一度便秘外来を受診してみるのも手ですよ。