便秘の改善方法、皆さんはどんなことを試した経験がありますか?

野菜をたくさん食べる、水分をたくさん摂る、便秘薬を飲む…

便秘には種類があり、それに合わせた自分に合った改善法があれば最善ですが、それはもはや自分であれこれ試しながら模索していくよりほかありません。

その選択肢の1つとして、今回は温罨法(おんあんぽう)と言われる方法を紹介します。

この方法は、研究結果からも効果が認められている科学的根拠に基づいた方法です。

便秘を改善したほうが良い理由

まずは、便秘だけど別に平気でしょうと軽く考えている方に、改善の必要性について軽く。

便秘は便秘症という病気です。

定義はさまざまですが、

  • 便が出にくくて、お腹に溜まった状態が続いて苦しい時
  • 排便があっても出きった感がない時

便秘といえる排便頻度は人によって差がありますが、2~3日でなくて辛い・1週間出ていないというケースは便秘です。

逆に、2~3日出ていないけれどもへっちゃら、その後元気の良い便がでます!という場合は便秘ではないでしょう。

便秘の原因は、

  • 仕事柄
  • ビタミン・食物繊維の不足
  • 生活習慣が不規則
  • 運動不足

などなどさまざまで、症状によって何通りかの種類にわけられます。

分け方は大まかに、

  • 生活習慣が原因になっている機能性便秘
  • それ以外の病気などが原因になっている器質性便秘

詳しくはこちらの記事をご参考に。

問題は、便秘が病気と併発しているケース

便秘の種類でいう器質性便秘

もしかしたら、知らないうちに病気にかかっていて、その影響で便秘になっているのかもしれませんし、便秘を放っておこくことで罹患するリスクや病気による死亡リスクが上がってしまうこともあるのです。

便秘と病気の関連についてはこちらの記事に詳しく書いています。

復唱しますが、便秘は放置してはいけない病気だということ。

病院に行くレベルの病気なのです。

事実、人気の便秘外来は数年待ちのところもざらにあるとか…

便秘の解消は自分の命を守り、健康生活を持続するためにとっても大事なことなのです。

では、その解消方法の1つである温罨法について紹介します。

罨法(あんぽう)とは

聞きなれない方も多いと思います。

もともと、罨法(あんぽう)は看護の専門用語で、看護師さんなら当たり前に知っている看護技術の1つでもあります。

看護師は医師の指示がなくては行ってはいけない医療行為があります。

でも、罨法は、看護師が患者さんの容態をみて自分で判断して行ってもOKな看護技術です。

症状を軽減させるために、患者さんの状態に合わせて患部を温めたり冷やしたりする療法です。

温罨法と冷罨法がある

罨法には、鎮痛や消炎の効果があります。

湿布の考え方と同じですね。

痛みや刺激を感じるということは、血流が速くなっていて、身体が過敏になっている状態。

患部を冷やすことで血の巡りが落ち着き、炎症が抑えられて痛みが和らぎます。

捻挫したり切り傷・擦り傷ができてしまったとき、心臓よりも高い位置に患部を上げたほうが良いのは、出血を抑え、患部に血が溜まらないようにするためです。

いわゆる急性的な炎症に対しては冷やす行為が適しているわけですね。

逆に、「ここのところずっと」という慢性的な症状の場合は温めるのが効果的

ここのところずっとのケースは、例えば凝り固まって血流が悪くなっている場合が1つ考えられます。

そんな時は症状がある部分を温めてあげることで、症状が改善したりしますよね。

また、体が温まると自律神経の関係で、体が休息モードになりやすいです。

寝れない時に温かい飲み物を飲むとリラックスして眠りやすかったり、お風呂に入ってポカポカしていると眠気が出てくるのはそういうこと。

これが罨法の考えかたです。

部位別の罨法技術

今回は便秘解消の温罨法のご紹介ですが、同時に腰痛持ちの方や不眠、ほかの症状があるために便秘になっているケースもあるため、症状が出ている部位別に、温罨法・冷罨法のどちらが適しているかを図でご紹介します。

出典:ナースなみんなのコミュニティ「便秘時、果物、野菜、水分などを多くとるとよいといわれるのはなぜ?」

温罨法のポイントは、

  • 知覚神経へ働きかけて、筋肉の緊張や拘縮を和らげること
  • 血液・リンパ液の循環を良くして細胞の新陳代謝を高めること

冷罨法のポイントは、

  • 知覚神経へ働きかけて、疼痛を和らげること
  • 血管収縮や血液・リンパ液の循環を抑えて、組織代謝を低下・炎症を抑制すること

です。

どちらも、温めた・冷やした患部の皮膚症状が出ていないか、異常がないかを確認しながら行うと良いです。

なお、小さいお子さんに冷罨法を使う場合、急な体温低下からショックを起こす可能性がありますので、判断に困ったときはかかりつけの病院や、専門家への相談窓口で確認すると良いでしょう。

こちらに、相談先をまとめてありますのでご参考まで。

看護師さんむけの教材にはもっと詳しい内容や細かい注意点が書かれています。

それだけの知識を要する技術であるため、一般に家庭で処置する際は、こんな場合は冷やす・こんな場合は温めるが理解できていればOKだと思います。

もしもの時の素人判断は危険のため、その時は専門家にご相談くださいね。

便秘改善のための温罨法

さてでは、本題の便秘に効果がある温罨法についてです。

温罨法の効果

看護の現場で温罨法の効果に気づいた看護師が研究とともに実践で始めた温罨法。

具体的には、改善が課題だった手術後の便秘。

温罨法の効果を確かめるために、研究班は、便秘に悩む19~86歳の入院患者14名に温罨法を実施しました。

すると、50.0%に排便がみられたというのです。

また、病院や老人保健施設などに入院・または入所している24~97歳の54名にも試したところ、最初の温罨法で59.3%に排便があったとのこと。

温度による効果の違い

温めるといってもどのくらいの温かさが効果があるのか?

タオルを使う場合は60℃くらいです。

イメージが湧くでしょうか。

お風呂の温度がだいたい40℃くらいのご家庭が多いですよね。

60℃は手はつけられるものの、ずっとはちょっと熱いと感じるくらいです。

80℃は火傷レベル。

お湯を沸騰させて(100℃)、半分水を入れればだいたい50℃、それより少し高い温度が60℃です。

温度による効果の違いを調べた研究がこちら。

便秘の自覚がある55名の健常女性を対象に、60℃グループと40℃グループに分けて効果を比較しました。

ちなみに、60℃グループは1日1回10分、40℃グループは日中に毎日5時間です。

結果がこちら。

  • 60℃グループでは、排便数が増加
  • 60℃グループでは、下剤を使用した日数が減少
  • 60℃グループでは、排便のなかった日数・便秘に差はなかった
  • 40℃グループでは、排便数と下剤の使用日数に差はなかった
  • 排便のない日数が減少し、便秘減少

つまり、40℃と60℃のどちらも、便秘症状の改善にはつながったということです。

ただ、その効果の出かたが異なる結果でした。

でも、40℃の場合は長時間温め続ける必要があり、60℃ならば10分で済む。

私だったら60℃で1回10分を選ぶでしょうか。

研究でわかっていること

これまでの研究でわかっていることがこちら。

日本看護技術学会 技術研究成果検討委員会の温罨法班が一般に公開している内容になります。

貼用部の皮膚温が 4℃程度上昇し、2℃程度の上昇が 1 時間以上継続する刺激を与えられ る方法であれば、どんな方法でもよいというのが、現在の到達点です(菱沼 2011)。熱布を 用いた湿熱刺激、熱布をビニールで包んだ乾熱刺激、蒸気温熱シートが代表的な方法です。 当てる部位は腰部または腹部です。1 回のみ当てる方法、毎日連続して当てる方法がありま す。夏でも適用できるか、当てる時刻で効果に差があるかどうかは、まだわかっていません。

引用:日本看護技術学会 技術研究成果検討委員会『便秘症状の緩和のための 温罨法 Q&A Ver. 3.0』

温罨法の手順

現在、温罨法には3つのやり方があります。

  • 熱布罨法[川島式](川島 1994)
  • ビニール袋に入れた熱布[丸山式]
  • 蒸気温熱シート[花王めぐリズム®]

それぞれ、日本看護技術学会にならいご紹介します。

あくまで一般にやりやすいよう、専門用語は避けて手順のみ簡単に昇華しましたよ。

熱布罨法[川島式]

準備するもの

  • 小タオル(30cm×40cm) 3 枚
  • バスタオル 1 枚
  • バスタオル大のビニール(ポリ袋でOK) 1 枚
  • 70℃程度のお湯

60℃のタオルを作るために、少し熱めの70℃のお湯が必要になります。

ゴム手袋を2枚重ねて絞ると熱くないとのこと。

  • 小ダオル3枚をお湯につけて絞る
  • ヤコビー線を中心にして腰背部に当てる
  • 小ダオルの上にビニールをかけ、その上にバスタオルをかける
  • そのまま10分

熱すぎる!と感じるようなら「気持ち良い」と感じる程度まで冷ますようにしましょう。

ちなみに、ヤコビー線とはこのあたりのこと。

出典:日本看護技術学会 技術研究成果検討委員会『便秘症状の緩和のための 温罨法 Q&A Ver. 3.0』

ビニール袋に入れた熱布[丸山式]

基本、温罨法はうつぶせ寝で、背面を温める方法になりますが、さまざまな理由で仰向けしかできない人の場合は、この方法が使えます。

準備するもの

  • 小タオル 2枚
  • ビニール 1 枚
  • 60℃のお湯

最初にご紹介した川島式とほとんど一緒です。

  •  浴用タオルを60℃の湯で絞る
  •  絞ったタオルをビニール袋に入れ、空気を抜いて当てる
  • 布団やタオルがある場合は90分、直接皮ふに当てる場合は15分

蒸気温熱シート[花王めぐリズム®]

これはもうご存知、市販されている「めぐリズム」ですね。

出典:Amazon「めぐりズム 蒸気の温熱シート 16枚入

手順は、いうまでもありませんが、シートを購入し、2時間以上貼り付けましょう。

この商品は、表面温度が 40℃で 5 時間継続するよ うに設定されています。

3つの手順を比較

それぞれ、きちんと研究結果から効果がでている方法ですので、ご自身の環境に合わせて・性格に合わせてやり方を選んでみてください。

こちらは、それぞれの特徴をまとめた表です。

出典:日本看護技術学会 技術研究成果検討委員会『便秘症状の緩和のための 温罨法 Q&A Ver. 3.0』

私だったら…「めぐリズム」を使ってしまうかもしれません。

川島式・丸山式は自宅にあるものですぐにできる方法で、手伝ってくれる人がいれば、タオルをかけたりする際の軽いタッチが一種のリラックス効果も生み、気持ちのよさは倍増かもしれません。

「めぐリズム」は、貼りっぱなしで動けてしまうため、それだけのリラックスタイムをわざわざ設けようとしないで、片手間に済ませてしまうかもしれません。

いずれも、特徴に合わせて選べると良いですね。

おわりに

いかがでしょうか。

便秘解消のための看護技術の1つである温罨法について、やってみよう!と思われた方がいらっしゃったら嬉しいです。

ちなみに、60℃のタオルは、電子レンジで蒸しタオルを簡単に作れるというのをご存じの方も多いと思いますが、電子レンジを使っての蒸しタオルについては、効果がわかっていないそうです。

そして、水分が含まれたタオルのほうが暖かさが”やわらかい”ことも知られているため、どちらが良いかというと、日本看護技術学会が推奨する60℃のお湯で絞ったタオルでしょう。

この方法は知らなかったという方、さっそく試してみてください。

参考文献:

  • 菱沼典子, 小松浩子編, Evidence-Based Nursing 看護実践の根拠を問う 改訂第2版, 南江堂, 121-132, 2007
  • 菱沼典子, 香春知永, 横山美樹ほか,聖路加看護学会誌, 4(1), 30-35, 2000.
  • 菱沼典子, 山崎好美, 井垣通人, 日本看護技術学会誌, 9(3), 4-10, 2010.
  • 井垣通人, 永嶋義直, 菱沼典子,日本看護技術学会誌, 8(2), 29-36, 2009.
  • 深井喜代子, 杉田明子, 田中美穂, 日本語版便秘評価尺度の検討, 看護研究, 28(3), 201-208, 1995.