「芸能人は歯が命」

1995年のCMで聞きなれたなんだか懐かしいこのセリフ。

いまや芸能人じゃなくても歯は命。

なんでって?

人は食べることで健康な体を作り生きているから。

いろんな栄養素をとりいれるために健康な歯が必要です。

でも歯の寿命は、世界一になった日本の平均寿命に追いついていないのが現状です。

つまり、寿命がくる前に歯がなくなってしまうということ。

歯がなくなる原因は歯周病と虫歯がツートップ。

これらを減らせれば、もしかするともっと健康寿命を長くすることだって可能かもしれません。

今回は歯と体の健康について学びましょう。

歯を清潔に保つと良い理由

最初に結論から。

口の中をきれいに保つことで、

  • 疾患のリスクを減らすことができて
  • 結果、健康寿命を延ばすことができる

疾患とは具体的には、糖尿病・心臓病・肺炎・低体重児出産・骨粗しょう症などのこと。

これらは全て歯周病と関連が深いもので、下記のような多くのエビデンスがあります。

  • 歯周病と深い関連が指摘されているもの:糖尿病、喫煙
  • 歯周病の潜在的な影響が指摘されているもの:骨粗しょう症、社会的心理的ストレス
  • 歯周病の影響について報告されいてるもの:肺炎、動脈疾患、低体重児出産、感染性心内膜炎

これらは、歯周病になった場合にリスクが高くなるよというものです。

つまり裏を返してみると、歯周病を予防することでこれらの疾患にかかるリスクを減らし健康寿命を延ばせるというわけです。

ではそもそも歯周病とはどんな病気なのでしょう?

歯周病の基礎知識

聞きなれているものの、よく知らない方が多い歯周病。

歯周病は、歯肉や歯を支える骨に炎症が起きる病気です。

炎症した部分は徐々に破壊されていき、だんだんと骨も吸収し始めます。

最後には歯がグラグラしてとれてしまいます。

破壊される原因は「バイオフィルム」。

バイオフィルムとは?

バイオフィルムとは「細菌が集まってできたヌルヌルネバネバの塊」のこと。

排水溝の蓋のヌルヌル、パイプのヌルヌルと同じです。

あのヌルヌル細菌の塊なの?!!

そうなんです。

そのままお風呂を使ったり流しにお皿を置いたりするのはとっても不衛生。

放置せずに洗浄してあげてくださいね。

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出典:日本口腔保険協会HP

さて戻りますが、バイオフィルムは歯と歯肉の境目についた汚れが、歯と歯肉の間に入りこむことででき、強い毒素を出します。

バイオフィルムができると毒素によって歯肉に炎症が起き、隙間(歯周ポケット)ができます。

放っておくと、バイオフィルムは歯周ポケットの中でさらに増殖。

ポケットは深くなり、歯肉は歯を支える働きができなくなってしまいます。

成人の実に80%以上が歯周病

とはいっても、自分には関係ないと思っている方も多いと思いますが、もしかしたらすでに歯周病かもしれませんよ。

統計では成人の実に80%以上が歯周病にかかっていることがわかっているんです。

こちらは、歯肉に所見のある人の割合です。

所見とは、炎症をおこしているからはじまる種々の症状がみられますよということ。

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出典:厚生労働省「平成23年歯科疾患実態調査」

年齢でみると歯ぐきに炎症がみられる人のピークは55~64歳で実に84.6%

高齢の方の割合が少ないのは、すでに歯周病などでなくなった歯の数が多いから。

若年層の歯ぐきに注目すると、歯ぐきに炎症がみられるの割合は、5~14歳の33.4%、15~24歳の70.3%と多いですよね。

若年のうちにできた小さな炎症が少しずつ拡大していくわけです。

このことは、歯周病は決して中高年層の病気ではなく、若いうちからの予防が大切であることを物語っています。

さらに怖いのが、歯周病と病気との関係です。

歯周病と病気の関連

歯周病は単体で歯の病気というわけではありません。

近年、歯周病が全身の健康に深く関係していることがわかりました。

中でも、メタボリックシンドローム・糖尿病・心臓病とのかかわりが注目されています。

歯周病とメタボリックシンドローム

メカニズムははっきりしているわけではなく、ちょっとややこしいのでこの場では割愛します。

メタボリックシンドロームとは、腹囲と血糖値・脂質・血圧の値が下記の数値に2つ以上当てはまる状態のことを言います。

単にお腹がぼよーんと出ている状態のことを指すわけじゃないんです。

血糖値、脂質、血圧の値が異常値を示すことは、高血圧、糖尿病、心臓病、動脈硬化などなどのリスクとなるため、歯周病がメタボリックシンドロームと関わる=糖尿病や心臓病のリスクにもなるということです。

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出典:日本口腔保険協会HP

歯周病と糖尿病

歯周病は糖尿病の合併症の1つで、いわゆる生活習慣病の1つでもあります。

さらに、歯周病になってしまうと糖尿病の症状を悪化させてしまうこともわかっています。 

そして、歯周病の治療で糖尿病が改善することもわかってきています。

繰り返しますが、歯周病とは歯の炎症。

炎症する原因は「細菌」が集まってできたバイオフィルム。

細菌の種類は現在10種類まで解明できていますが、この細菌が体内で血管の中に入って悪さするのです。

血管に入った細菌は体の力で死滅しますが、歯周病菌の死骸の持つ毒素は死滅せず血糖値に悪影響を及ぼします。

この毒素のことを内毒素といいます。

血液中の毒素は、糖分の取り込みを抑える働きのある「TNF-α」を大量に産生してしまいます。

つまり、血糖値を下げるホルモンの働きを邪魔してしまうのです。

血糖値がコントロールできない状態になると、糖尿病のリスクはあがってしまいますよね。

そういうメカニズムなわけです。

歯周病と心臓病

次に心臓病との関連です。

心臓病とは、心筋梗塞、狭心症など心臓にかかわる疾患のことを言います。

歯周病は心臓病にもつながっているんです。

心臓疾患は動脈硬化が重症化していきついてしまう病気。

その動脈硬化の原因の1つに、最近「歯周病」が取り上げられるようになりました。

歯周病の原因となる細菌は動脈硬化を誘導する物質を出す刺激物。

次第に血管内にプラークができ、血液の通り道が細くなります。

プラークとは歯垢(しこう)のことです。

このへんのヌルヌルのこと。

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出典:クリニカHP

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出典:日本臨床歯周病学会HP

このプラークが血管内で溜まっても血流が悪くなるし、剥がれて血の塊(血栓)ができてしまうと、そこで詰まったりしてしまうのです。

それが動脈硬化。

動脈硬化が脳血管でおこると脳梗塞の原因にもなったりします。

歯周病と妊娠・出産

妊娠との関係についても少しふれましょう。

妊婦さんの経験がある方、妊娠中の検診で歯科検診必須だったの覚えていますか?

それは妊娠するとホルモンが影響して歯周病になりやすくなるからです。

このホルモンは、歯周病の原因となる細菌を増殖させてしまう働きがあるのです。

ホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になるといわれており、妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎が起こりやすくなるのです。

軽度で済むことが多いため、心配しるぎることはありませんが、妊娠中は意識して歯磨きをしたいですね。

なお、気を付けたいのは「低体重児早産」。

妊婦さんが歯周病にかかっている場合、低体重児・早産のリスクが高くなることがわかっています。

下のグラフをごらんください。

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出典:日本臨床歯周病学会HP

歯周病菌が、胎盤を通して胎児に直接感染するのが原因ではないかといわれています。

そのリスクは、喫煙やアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数値です。

びっくりしたでしょう。

お酒をやめて、タバコもやめて、コーヒーも我慢して、葉酸をたくさん摂取するようにして…

妊娠中はいろいろ気をつかうと思いますが、実は一番気をつけなきゃいけないのは歯の健康なんです。

おわりに

歯周病と病気との関係は、ほかにも肺炎や骨粗しょう症などがあげられます。

日常の歯磨きがいかに大事かご理解いただけましたか?

「歯の健康は全身の健康」とは、なにも大げさなことではないのです。

歯周病は予防できる病気。

ではここで、歯磨きが面倒な方にアドバイス、「1本につき10回こすればOK」です。

子供のころ歯磨きが嫌いだった私、歯医者さんのこの一言で「なんだ、そんなもんでいいの」と気が楽になったのを覚えています。

もちろんきちんと10回ですよ!

意外と10回ずつ全部の歯を磨くのは時間がかかるのですが。

でもすべては将来の自分の健康のため。

毎日コツコツがんばりましょうね。