2016年度もついに終わりに近づいてきましたね。

暖かくなってきて過ごしやすい気候になってきましたので、病気や感染症といった身体の不調は心配なくなると思いがちですがいかがでしょうか。

実は春はストレスを抱えやすい季節。

特に3月の月曜日は自殺者が年間で最も多い統計がでています。

そして自殺の理由としては、疾病の内約で「うつ病」がとても多い割合となっています。

政府は毎年3月を自殺対策強化月間として、自殺防止の取り組みを呼び掛けています。

今回は、メンタルヘルスの特にうつ病について、基本的なことから、メンタルヘルスの不調が関連する自殺について考えようと思います。

うつ病とは

うつ病は、脳の疲労からくる身体疾患です。

仕事に過度に打ちこんで疲れを溜め込んでいたり、人間関係のトラブルなどが原因で誰もがなる可能性がある病気です。

うつ病の症状

次のような症状が2週間以上ずっと続く場合は、うつ病である可能性が高いです。

実際にはもう少し細かいチェック項目のもとで診断が下りますが、「もしかしたら?」と感じているかたは、どのくらい当てはまるかチェックしてみてください。

  • 抑うつ気分(憂うつ、気分が重い)
  • 何をしても楽しくない、何にも興味がわかない
  • 疲れているのに眠れない、一日中ねむい、いつもよりかなり早く目覚める
  • イライラして、何かにせき立てられているようで落ち着かない
  • 悪いことをしたように感じて自分を責める、自分には価値がないと感じる
  • 思考力が落ちる
  • 死にたくなる

生きていれば誰でも起こるような症状ですので、一見「ネガティブなだけ」とか、「やる気が出ないだけ」とか、「怠けているだけ」ととらえがちです。

でも、慢性的にこのような症状で気分が優れない・辛い思いが続いている状態ならば、早急に専門科を受診しましょう。

うつ病の治療は個人差が大きいものの、症状をコントロールするための薬や治療法などがちゃんとあります。

放っておくと悪化する一方

症状が軽いうちは、気分の問題だと思いがちですが、軽いうちに気づいて早急に治療を開始するのが、一番早い回復の手段です。

放っておくとどんなことが起こるかというと、、、

だんだんと周囲からみてもわかるような症状が現れ始めます。

出典:ファイザー「こころのひだまり」

私の知人の症状では、

  • 食欲が極端に上がり下がりする(夜中にドカ食いする一方で日中はほとんど食べない)
  • 自律神経の乱れから眠れない(日中にずっと寝てる)
  • 急にものすごくネガティブになる・急にものすごくハイテンションになる
  • 急にキレる
  • 一度にいろいろできず、1つのことをゆっくり
  • すごくかまってちゃん
  • 会話のキャッチボールがどうもうまくいかない

もちろん症状は人それぞれですが、一般に、なんだか言動が不思議だとか、気分の抑揚が激しいとか、そういう場合は、それは病気の「症状」かもしれません。

具体的な言動としてあげられていたのがこちら。

  • スーパーに買い物に行っても、何を買ったらよいのか決められない
  • パソコンの電源を入れるのが面倒でいやだ
  • 掃除、洗濯、料理をするのが億劫だ
  • 部下からの書類に判を押してもよいのか決められない
  • さびしくて誰かにそばにいてほしい

引用:ファイザー「こころのひだまり」

いずれも放っておくと、自殺願望が強くなってしまったり、自傷行為に走るケースも多いです。

本人だけでなく、周囲の人も影響を受けてしまうケースも多く、うつ病患者を家族にもつ人は、それが原因で自分もうつ病を発症してしまったということも少なくありません。

生理学的にうつ病の状態とは

これがよく理解されていないため、うつ病への理解が進まず偏見がいつまでも横行する原因となっているので、病態に関することもご説明しましょう。

うつ病の原因は、幼いころの家庭環境、仕事でのトラブル、離職・離婚等のライフイベントの変化、親しい人の死亡などによるストレスや、疲労の蓄積や月経前・出産などホルモンの変化がある時、降圧剤などの服薬がきっかけでというケースが考えられています。

そして、最近の研究では、脳の神経細胞における情報の伝わり方に異変が生じているということが報告されています。

人間は、生活におけるあらゆる動作を脳から伝達を受けて実行しています。

それは感情も一緒で、「意欲」や「記憶」などの知的なことも情報として伝達されているのです。

それが「神経伝達物質」

なじみのあるセロトニン・ノルアドレナリンは神経伝達物質の1つで、人の気分・意欲・記憶などの感情にかかわる情報をコントロールしています。

ちなみに、人のポジティブ感情・ネガティブ感情の割合は3:7。

もともとネガティブな感情がずっと多い割合になっていますが、これを上手にバランスをとっているのが神経伝達物質というわけです。

どんなに楽しくても延々と笑い続けることはできないでしょう?

ちゃんと疲れるようになっていますし。

お子さんのいるママは、一度にいろいろできるハイスペックになりますが、ちょっとのことで気持ちが落ち込んで育児に差し障らないよう、「ウキウキ気分」が続くようコントロールされていますし。

でも、うつ病になると、何らかのことがきっかけとなってセロトニンとノルアドレナリンの量が減ってしまいます

そうすると、感情をはじめとする情報がうまく伝わらずに、気分的な症状を代表とするさまざまな症状があらわれると考えられています。

治療法もさまざま

一口にうつ病と言っても、人によってきっかけは異なりますし、症状の出方や重さも多種多様。

それらの原因をじっくりと聞きだして、適切なアプローチをすることが重要になります。

治療法は、一般には薬物療法が多いです。

薬物療法とは薬を飲んで症状を改善させることですね。

具体的には、神経伝達物質の働きを高める効果がある「抗うつ薬」を中心に、不安や焦燥がある場合は「抗不安薬」そして不眠がある場合は「不眠薬」を併用します。

その他、精神療法としては、医師との対話をとおして、患者の性格や考え方の傾向から、うつ病になったきっかけを探り、自分自身をコントロールする技術を身に着ける方向へ導きます。

治療の効果が出るのは人によっては何十年かかる場合もありますし、数か月で治る場合もあります。

私がよく聞くのは、ある日突然気分が晴れたというもの。

何等かの環境の変化か何かをきっかけに突然治る場合もあります。周りが気づけること

うつ病は、自覚症状があっても自分では認めたくないことが多いです。

そんな時に、周囲の気づいた人が「最近元気ないんじゃない?」「体調悪そうだけどどうかした?」と言った声かけをすることで、専門機関に足を運ぶきっかけにはならないでしょうか。

ではどんなことに気づけるでしょうか。

具体的には、

  • 表情が暗い
  • 涙もろくなった
  • 反応が遅い
  • 落ち着かない
  • 飲酒量が増える

このような”変化”があれば、”病気の可能性”があるのではないかと疑ってください。

また、体に出るサインもあります。

  • 食欲がない
  • 体がだるい
  • 疲れやすい
  • 性欲がない
  • 頭痛や肩こり
  • 動悸
  • 胃の不快感
  • 便秘がち
  • めまい
  • 口が渇く

このような症状が出ている人がいるようなら、まずは相談にいくよう勧めてあげましょう。

何度も言いますが、うつ病は何も恥ずかしい病気ではなく、日本では顕在化していないものの、先進諸国では4人に1人は罹っているメジャーな病気です。

風邪ひいてるんじゃない?くらいの気構えで医療機関に相談にいっても全く問題ないのです。

どこにかかればいいのか

まずは専門家に相談といっても、どこを受診してよいかわからないかた。

  • 総合病院の精神科や心療内科
  • 精神科専門のクリニック

もしくは、外科系の疾患かもしれないため、まずは内科で症状を伝えて判断してもらいましょう。

また、保健所精神保健福祉センターの相談窓口でもどこを受診すればよいのかを相談できますよ。

うつ病は治療しなくてはならない病気です。

放っておくと最悪の事態につながりかねません。

実は日本の自殺率の統計上、うつ病が原因であるケースがとても多いのです。

それらについて少し触れましょう。

うつ病が原因での自殺について

年間の自殺者数を分析したところ、その原因や動機も明らかになっています。

近年は毎年、「健康問題」が最も多く、次いで「経済・生活問題」「家庭問題」と続いています。

出典:内閣府自殺対策推進室「平成 27 年中における自殺の状況」

そして健康問題の内約をみてみると、最も多いのが「うつ病」

出典:警察庁「自殺統計」より厚生労働省自殺対策推進室作成

人数だけみて比較すると、なんと全自殺者数の自殺理由が最も多いのが「うつ病」を原因・動機とするものだったのです。

ある専門家によると、うつ病患者の自殺率はうつ病患者全体の15~25%とされていて、高い確率で自殺に走るケースがあるとのことです。

また、WHOによる世界の統計でも、自殺者のうち約30%がうつ病に罹患していたということがわかっています。

”自殺したいという気持ちになる”病気ですから、このような結果が出るのは自明ではありますが、日本でも自殺者の約60%がうつ病を患っていたと考えられるほどで、それだけうつ病の影響は深刻であることがうかがえますね。

逆にうつ病にならないよう、またはちゃんと治療を進められていさえすれば、この自殺者数は激減させることも可能ということ。

でも、うつ病に罹患しながら自殺したその約60%のうち、70~80%は専門機関での治療を受けていなかったということもわかっています。

うつなのに受診しない人が多い事実

ある研究(真生会富山病院心療内科の山藤菜穂子)で、うつらしい症状が2週間以上続いているのに、該当する10人中9人が「専門科を受診しない」という事実が明らかになりました。

研究は、2004~2005年、621名の会社員を対象にした調査です。

結果の概要がこちら。

  • 「症状が2週間続いた場合に専門科を受診するか」に対し、「はい」が8.3%、91.3%が「いいえ」と回答
  • うつの可能性が高い高うつ群でも、専門科を受診するという人は、60人中たった5人
  • 受診を避ける理由は、男性で「一時的なものにすぎないから」といった回答が多かった
  • 具体的には、「一時的にストレスがたまっているだけだから」が約70%、「疲れやストレスがなくなれば治ると思うから」が約55%、「一時的な疲れのせいだと思うから」が50%
  • その他の理由としては、「うつは病気ではなく、気の持ちようによるものだから」、「考え方の問題」「心の問題」「病院に行っても治らないから」など

つまり、「うつだと思うけれども、その症状は一時的だし、今は忙しいだけで、気の持ちよう次第で治る」そんな風に考え、うつ病の深刻さを理解せず、だましだまし放置して治療できるのに足を向けない人が大変多いということが推察できます。

そんな人たちがうつ病を放置し続け、症状が悪化して自殺してしまうケースはどうにか減らしたいものです。

自殺者を減らす対策を打つために、国は3月を自殺対策強化月間としています。

なぜ3月なのか。

自殺者数が多いのは3月

警察庁の自殺統計に基づく年間の自殺者数の推移をみてみると、各年で最も自殺者数が多いのが3月です。

出典:厚生労働省自殺対策推進室「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等」

ではなぜ3月なのでしょうか。

その原因はいくつか考えられていますが、多くが環境要因です。

うつによる自殺原因はそもそも理由が複合的な場合が多いため、これが要因だ!とする研究結果はありませんが、一般にいわれているのはこちらのようなこと。

  • 決算や確定申告を節目とした倒産や失業
  • 期末による異動
  • 卒業や就職といったライフイベントの変化
  • 木の芽時(このめどき)

1、2、3は大体想像がつくでしょうか。

年度末は何かと環境の変化が多い時期です。

3の例は、子供の卒業や就職による”喪失感”や、親の役割を終えた”荷下ろし感”が原因となるケースです。

4は初めて耳にする方も多いかもしれませんが、「木の芽時(このめどき)」とは、木の芽の出る季節で春を意味します。

この季節は、冬の厳しい気候から解放され、急激に陽気な季節へ変動することから、その大きな変化に体がついていけず体調を崩すケースが多いのです。

生理学的にいうと、春は自律神経のバランスが崩れやすい季節なのです。

5月病と似ていますが、

  • 倦怠感
  • 頭痛
  • めまい
  • 肩こり
  • 動悸
  • 不眠

このような様々な症状が現れやすい時期なのです。

うつに関連する自殺対策

そんなわけで、3月に多い自殺への対策として、強化月間が設けられるようになったほかにも、地域自殺対策緊急強化基金を創設するなど、様々な取り組みがなされています。

地域自殺対策緊急強化基金は平成21年に創設され、専門家による相談支援事業や、専門家の育成、啓発事業などに取り組んできました。

平成23年度は特に普及啓発の実績が大きく、それ以降顕著に自殺数が減っています。

具体的には、既存の例えば無料の電話相談窓口である「いのちの電話」について広告を出したり、自殺予防フォーラムの開催、自殺の実態を詳細に調査するための情報センターである自殺予防情報センターの運営資金等です。

出典:厚生労働省「自殺の状況をめぐる分析」

この基金による取り組みの成果は、自殺死亡率の減少と有意な相関関係があることがわかり、事業が一層強化されることを願います。

出典:厚生労働省「自殺の状況をめぐる分析」

3月の自殺対策強化月間では、それまでも展開してきた事業を集中的に取り組み、啓発活動を強化しています。

目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、この取り組みを象徴するロゴマークがこちらの「いのちを支える」ロゴマーク。

出典:町田市保健所「気づいて!大切な人・大事ないのち」

自殺に関連する研究事業も平成21年を境に増えました。

鉄道自殺に関する研究では、青色LEDが自殺防止に成果を上げることがわかり、多くの鉄道会社で普及が進みました。

最近では日照時間が少ないほど鉄道自殺者が多いことがわかってきて、飛び込みが多い路線でピンポイントの時間に見回りを増やす等の対策が可能だとされています。

さて、そういうわけで、ここでは自殺者の多くがうつ病を患っている事実をご紹介しました。

自分はうつの症状がないという方も、身近にもしかしたらいるかもしれません。

潜在患者も含めると、実に4人に1人はメンタルヘルスの不調を訴える人がいると考えられていますので、ぜひこれを機にうつ病の理解を深めていただけたらと思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

再三しつこく申し上げましたが、うつ病は神経伝達物質の減少が招いている身体疾患です。

症状が出ていて辛いのに

  • 我慢してしまう
  • 認めない人
  • 病院に行く時間がない

などで、それが悪化したときにでる損害は本人ももちろん周囲もそのために大変な思いをすることになります。

医療経済の視点からみても、うつ病患者を減らすことで減らせる医療費は莫大です。

うつ病は症状が軽いうちに治療を開始するのが一番の方法です。

そして、患者の身近にいる人たちが、うつ病への理解がないと症状の改善はとても難しい。

これが一番の課題だとは思いますが…

うつ病の病態は神経伝達物質の異常。

つまり、物事に対してとても敏感になっている状態です。

人の言動が気になったり、びっくりするぐらい聞き耳を立てていたり、自分に対する人の感情にもとても神経質に捉えがちです。

そんなの気にしなきゃいいのにと思うことも、気になっちゃう病気なのです。

だから、患者が身近にいるかたは特に、そうでない方もぜひこれを機にうつ病への理解を深めていただけたらと思います。

うつ病は治療が何年にも渡るケースも多く、何年も病気と向き合わなくてはならない患者自身もとても辛い日々を送っていると思います。

いい年齢の女性患者の場合、服薬を続けている限り、出産した子供に障害が出てしまうリスクが高いことから、結婚・出産といったライフイベントさえにも差し支えてしまうほど。

飲んでいる薬の副作用が強くて日中眠り続けてしまうほど。

身近にいる患者をみてきた実体験より、また専門家として、

  • 日本のうつ病がもっとメジャーになる
  • 潜在患者がもっと堂々と治療に行ける
  • 治療をがんばっている患者が堂々と病気だから休んでると言える

このように患者の身近にいる家族等へのメンタルのサポートがもっともっと充実するよう願っています。