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出典:東京都報道発表「都内での感染性胃腸炎の流行警報」 

2016年今シーズン、ノロウイルスが主原因である感染性胃腸炎の流行が目立ちはじめています。

11月24日に東京都で、26日には奈良県で流行警報が出されました。

感染性胃腸炎は毎年11月~2月までの時期に流行がみられますが、

例年と比較して、今シーズンは流行開始が少し早く、感染拡大の勢いが強いということで例年に増した警戒が必要です。

本格的な流行を前に、早いうちに知識を身につけましょう。

都内での感染性胃腸炎の流行警報について

2016年11月24日、都内における感染性胃腸炎の患者数が「流行警報基準」を超えました。

その名のとおり、

”警報が出るほど流行っているんだ”

ということですが、この流行警報の基準がかなりの流行度合なので、”へえそうなんだー”と聞き流して良いレベルではありません。

流行警報の基準とは

流行警報基準を簡単にいうと、

「定点あたり(=1つの医療機関あたり)1週間の患者報告数が20人を超える保健所で、その管内人口の合計が、東京都の人口全体の30%を超えた場合」

のこと。

わかりにくいので、もう少し簡単にイメージしてみると、

たとえば、東京都にある23区以外の26市・5町・8村にあるすべての病院で、1週間で20人以上の感染性胃腸炎の患者がいたということに相当します。

※だいたい23区以外の総人口が東京都の人口の30%程度です(平成28年1月末の更新情報より)

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出典:東京都「都の概要」

また、23区でたとえると、人口の多い世田谷区・江東区・杉並区・江戸川区・練馬区・足立区・大田区あたりのすべての病院で患者さんが集中すると流行警報につながる計算に相当します。

地図でみてみると流行範囲が広域であることが一目瞭然ですね。

この場合、広域的に流行が発生・継続しているとして、警報を出す決まりになっています。

今回の東京都の流行警報の概要

東京都福祉保健局によると、今回の流行警報で報道発表された内容はこちらです。

  1. 264か所の小児科定点医療機関からの第46週(11月14日~11月20日)の患者報告数は20.2定点(週)
  2. 患者報告数が0人/定点を超えた保健所は、都内31か所中12か所で、管内人口の合計は、東京都全体の38.0%

出典:東京都報道発表「都内での感染性胃腸炎の流行警報」 

1つ目は、東京都の264か所の病院で、1病院あたり20.2人の患者さんがでましたよということです。

患者報告数の推移がこちらになります。

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出典:東京都報道発表「都内での感染性胃腸炎の流行警報」 

定点あたりの報告数が、今シーズンは急激に増えていることがわかると思います。

今後12月・1月にかけて流行のピークに向かうと予想できます。

そして、第46週時点で警報レベルにあった保健所は下記の地区です。

  • 中央区
  • 台東区
  • 江東区
  • 品川区
  • 目黒区
  • 大田区
  • 中野区
  • 荒川区
  • 足立区
  • 葛飾区
  • 江戸川区
  • 八王子市

東京都の東部にあたる地区が軒並み流行している様子ですね。

では、そんな感染性胃腸炎、いまさらながらどんな特徴があるかを復習してみましょう。

感染性胃腸炎・ノロウイルスの基本情報

メディアでは、公式なところでは”感染性胃腸炎”と”ノロウイルス”をきちんと使い分けていますが、混在して使っているところもちらほらあります。

そのため、「別物なの!?」とよくわかっていない方も多いのではないでしょうか?

結論から申し上げますと、2つは、それぞれ「病気の診断名」と、その「原因菌の名前」です。

感染性胃腸炎とは

感染性胃腸炎とは、主にウイルスなどの微生物が体内に入ることで起きる全ての胃腸炎のことです。

その原因となるウイルスが、

  • ノロウイルス
  • ロタウイルス
  • サポウイルス
  • アデノウイルス

という場合が多く、成人をはじめ一般に多いのが「ノロウイルス」が原因となる感染性胃腸炎です。

だから、嘔吐下痢続きで病院に行かず「ノロだ」といっても、もしかしたら「ロタ」かも「アデノ」かもしれないのです。

症状と潜伏期間

感染性胃腸炎の主な症状は、腹痛・下痢・嘔吐・発熱です。

ただし発熱は軽い場合が多いです。

潜伏期間(感染から発症までの時間)は24~48時間で、これらの症状が1~2日続いてだんだんと回復します。

後遺症はなく、感染しても発症しない場合・軽い風邪のような症状の場合もあります。

感染性胃腸炎が原因での死亡例は、直接の原因であるとは言い切れない場合が多く、

例えば高齢者介護施設では、もともと体の機能が弱っている高齢者の方が、吐いたものが詰まって窒息につながったときといった場合があげられます。

通常は、感染性胃腸炎が原因で直接死に至るケースは稀であるといえます。

感染経路は?

ノロウイルスによる感染性胃腸炎は主に2通り。

  • 汚染した食品を食べたときに起こす食中毒
  • 食中毒にかかった患者の便・嘔吐物の中にいるウイルスが近くにいる人の口から体内に入る

この2つにわけられます。

また、感染報告がよくある状況はこのような場合です。

  • 感染した人の便や吐物に触れた手指を介して、ノロウイルスが口に入った場合
  • ノロウイルスを内臓に取り込んだカキやシジミなどの二枚貝を、生で又は不十分な加熱処理で食べた場合
  • 感染した人が十分に手を洗わずに調理した食品を食べた場合
  • 感染した人の吐物や便が乾燥して、細かな塵と舞い上がり、その塵と一緒にウイルスを取り込んだ(吸い込んだ)場合

よく飲食店で感染性胃腸炎が発生するのは、2の熱処理が不十分な場合が多いです。

「生牡蠣」や「ユッケ」、「馬刺し」などの生肉は注意が必要ということですね。

もちろん、飲食店で生肉を提供するためには、食品衛生法に従って“生肉を安全に扱う”基準を満たしている必要がありますので、“安心なお店”を選べば大丈夫です。

それでも万が一を考えて、食中毒を起こしたら大変な妊婦さんや高齢の方、乳幼児へは生肉は避けましょう。

食中毒の原因菌は熱に弱いため、きちんと加熱していれば心配ありませんよ。

予防は簡単ではない

感染症は、感染者が出てからの「拡大防止」と、そもそも感染させないための「予防」があります。

ノロウイルスに関しては、感染力が非常に強く、ウイルスがわずかに口に入るだけで感染してしまいます。

集団生活の中で一度感染者が出てしまった場合、よほどの隔離設備がない限り、流行はある程度避けられないといえるでしょう。

でも現実は、完全に隔離されたスペースを確保・対応にあたる人員の確保等は、

例えば高齢者施設や保育園などでは限界があり難しいです。

それでも、予防としてできることとしてあげるとすれば「手洗い」と「食品の十分な加熱」

どの感染症予防にもいえることですが、

“手指についたウイルスや細菌が感染源として体内に入ることを防ぐ”

自分で気を付けられるのはこれだけですが、これだけで感染を防げたら安いものですよね。

それから、特にこの時期、流行時期には食品をよく加熱して食べるようにしましょう。

これは食中毒を予防する一番の方法です。

感染の拡大を防ぐには

では次に、感染者が出てしまった場合の拡大防止の方法です。

こちらは、国立感染症研究所が、一般向けではなく、

特に拡大防止に敏感になる必要がある医療従事者や施設のスタッフへ向けた注意事項です。

  • 症状が回復しても数日はノロウイルスを排出する。手洗いの徹底等の感染防止に注意
  • 下痢や嘔吐の症状がある場合は、できるだけ学校や仕事を休み、体力の回復に努めること
  • 嘔吐した場合は、口の中をよくすすぎ、また、使用した洗面器や流しなどは直ちに洗浄・消毒する
  • 感染した人の便、吐物には多量のノロウイルスが含まれていますので、取扱については十分に注意して処理すること
  • マスクや手袋の着用(素手で触れない)をしてペーパータオル等で拭き取る
  • 拭き取ったペーパータオル等は、ビニール袋に入れ、消毒・密封して廃棄
  • 便や吐物を処理した後の床などの消毒
  • 作業後は手を洗い・うがいをする

嘔吐物の処理の仕方などは、厚生労働省によるマニュアルがあり専用の講習会が開かれるほど、徹底した後始末が拡大防止に重要になってきます。

特に集団生活をする施設で働く方や入所している方、そのご家族においては

「感染はある程度仕方がない」

との理解のもと、被害を最小限にするために自分たちでできる日ごろの予防と、施設で感染が起こった場合の家族の対応等を考えておくと良いでしょう。

治療法はない

残念ながら、ノロウイルスによる感染性胃腸炎に特効薬はありません

病院を受診すると、おもな処置としては、つらい症状を軽減するため の対症療法のみ。

とはいえ、乳幼児や高齢者は嘔吐下痢で脱水症状になりやすいので、嘔吐下痢症状がでたら早めに受診しましょう。

その際、事前に病院に電話を入れ、症状を伝えておくようにしましょう。

感染力が強いため、院内感染防止のため病院での隔離部屋の用意が必要かもしれませんし、予約時間ギリギリに来院するような指示が出るかもしれません。

前述しましたが、対処療法で安静にしてじっと回復を待っていれば、2~3日で回復します。

動き回れる元気すらなくなるほど辛い症状ですが、間違っても人混みに出ないよう気を付けてくださいね。

ちなみに、症状が回復した後もウイルスは体内に残っていますので、感染しないとは限りません。

理想をいうと、4~5日は安静にしていることが望ましいですよ。

おわりに

現代は、東西南北、電車で・車でと移動しやすい世の中。

感染に気付かず、新幹線に乗ったらあっという間に遠方の地で感染源となってしまうことも多いです。

衛生管理が不十分な東南アジアの地域などへの渡航で、空港による検疫が行われる「水際対策」が大事なのは、健康被害の大きい感染症を国内は持ち込まないためですよね。

その対策のミクロ版が、例えば「学校への登校禁止」「病院での隔離措置」などにあたります。

でも、日常生活の中で、会社では「ノロになったので出勤停止」といったルールはありません。

最近は感染症に敏感な人が多くなったため、咳が出ているのにマスクをしていないと白い目で見られたり、電車内などでは隣にいた人が別の車両に移ったりといったこともあります。

それだけ世間の感染症に対する警戒心が強い時代ではありますし、風邪の症状とは異なり、感染性胃腸炎の嘔吐下痢症状はとっても辛いので、おそらく外出するなんてそもそも出来ない状況だとは思いますが…

どうしてもな事情の場合は…

マスクを徹底して、回復するまで人込みはなるべく避けたり等、感染を広げないよう工夫をすることが大事です。