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もうすぐ12月。

忙しい年末を迎え、寒さも日に日に厳しくなってきて、寒暖差と湿度の低下から体調を崩す方も多いこの時期。

もうひとふんばりして、元気よく2017年を迎えたいですよね。

そこで今回は「笑いの健康法」を取り上げます。

笑うことが免疫力アップにつながるとは、聞いたことがある方もいるかもしれません。

精神免疫学・心身医学などの分野では、笑いの健康への影響について長年研究されてきました。

今回は、「笑い」によって難病を克服した実例とともに、数ある研究結果のうち代表的なものをご紹介しましょう。

笑いにはどんな効果があるか

笑うことはとっても良いことで、2009年にアメリカで出版された『Scientific American Mind』という雑誌では、“笑い”が特集されていたり、日本では、大阪府が取り組む「笑いと健康」事業の一環で「大阪発笑いのススメ」という冊子が出ていたりと、”笑い”による健康法が注目されています。

今回は、気になる「大阪発笑いのススメ」は置いておいて、『Scientific American Mind』を取り上げようと思います。

雑誌には、これまで研究されてきた笑いの影響が整理されていて、大まかに下記の報告があるよと紹介されていました。

これまでの数ある研究の内容は、だいたいがこれらのテーマに分類されてきます。

  • 臓器を刺激して脳からのエンドルフィンの放出を増やし、気分の高揚・幸福感が得られる
  • 笑うことで心拍数・血圧が上昇し、それが下がった時にストレス反応を緩和させリラックス状態へ導く
  • 血行を刺激し緊張を和らげることで、ストレス症状を弱める
  • ”善玉”の神経ペプチドが体中に流れ、NK細胞が活性化されて免疫システムを向上させる
  • 笑うことによって体内で自然な鎮痛剤が生成され、痛みを緩和させる
  • 満足度を高め、困難な状況に対処できるようになる
  • 気分を向上させ、うつ病や不安を軽減させる

少し難しい単語が出てきているので補足しましょう。

エンドルフィンとは

具体的にはβエンドルフィンと呼ばれる人間の脳内で分泌される神経伝達物質のことです。

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出典:PubChem

麻薬のモルヒネと同じ化学構造をしていて、働きも似ているため別名「脳内麻薬」ともいいます。

脳内”麻薬”といっても、体には害はなく人が生きる上で必要な物質なので悪いものではありません。

どんな時に分泌されるかというと、

  • おいしいものを食べたとき
  • 格闘技の最中
  • マラソンの最中
  • 性行為をしたとき
  • パチスロなどギャンブルの最中
  • リラックスしているとき
  • 熱いお風呂に入ったとき

など。

格闘技で大変な出血をしていたりしていても平気で闘い続けていたり、マラソンでいうとランナーズハイといいますが、極限状態で気分が高揚している状態になったり…

そんな時にエンドルフィンがたくさん分泌されています。

スポーツで極限の集中状態になっていたりすることをよく「ゾーン」といって、「アドレナリンがたくさん出ている」状態と理解されている方も多いと思います。

でも実は、アドレナリンよりも鎮痛効果が何倍も強いのがエンドルフィン。

快感を与える、免疫細胞を増やし・活性化させるなどの作用が強いのも特徴です。

NK細胞とは

NK細胞とはナチュラルキラー細胞のことです。

全身をパトロールして、がん細胞・ウイルス感染細胞などの体内の異常な細胞を見つけると攻撃する作用があります。

健康な体の人でも1日約3000個~5000個ものがん細胞が発生していて、常時それらと闘ってくれているのです。

NK細胞が活性化するということは、体の免疫力が高まるということ。

がんになりにくい人は、NK細胞が活発な人が多いといわれるほどです。

NK細胞は、ストレスがかかったり気分が落ち込むと活動が弱くなり、逆に気分が高揚したり興奮したりすると活発になる特徴があります。

神経ペプチドとは

神経ペプチドは、脳内で作られるアミノ酸が連なった物質(よりも小さい分子)です。

NK細胞とくっついて、NK細胞を活性化させる作用があります。

セロトニン・ドーパミン・レラキシンは、免疫システムに関連する働きをする神経ペプチドです。

これらのホルモンは、人がリラックスしていたり、幸福を感じていたりするときに放出されるものです。

一方で、ストレスに関連する神経ペプチドには、コルチゾール・エピネフリン・アドレナリンがあって、放出が長く続くと免疫システムを弱めてしまいます。

これらはストレスホルモンとして知られていて、人のストレスを測定する際の測定指標として使われることが多いです。

笑うことはそのほかにも良い影響が

このように、笑うことは体内の”気持ちが上向きになる”物質に作用して、結果”免疫力を上げる”といった効果にるながるわけです。

雑誌ではそのほかにも、笑うことで

  • ユーモアのセンスが上がる
  • 人とのコミュニケーションが上手になる

といったこともあげられ、面白おかしく書かれています。

こうしてみると、笑うことで得られる相乗効果ともいえる良い影響がたくさんあるなと思いませんか。

ではつぎに、実際に笑うことを治療にとりいれて難病を克服した人の話をご紹介しましょう。

難病“膠原病”を笑いで克服したノーマン・カズンズ

有名なアメリカの雑誌『サタデー・レビュー誌』の編集長を務めていたノーマン・カズンズ

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出典:wikipedia

彼は50歳の時に、強直性脊椎炎という自己免疫疾患(膠原病)にかかりました。

この病気は、治る確率が500人に1人といわれる難病です。

しかし彼は諦めず、「笑い」を治療薬にして病と闘ったのです。

その治療法というのが、「10分間、腹の底から笑う」というもの。

この笑い療法によって、病気による痛みがおさまり、眠りにつくことができるようになったそうです。

どんな治療をしても500人中1人しか治らないこの病気が、「笑い」と「ビタミンC」の両刀使いで治ったのです!

彼はこの治療法を繰り返して、なんと76歳まで生き延びました。

病を克服してから、ノーマン・カズンズは「笑い」の効能について独自に研究をするようになりました。

『笑いと治癒力』という本も出版しているので、ご興味あればどうぞ。

彼は、笑いと関係が深い”プラシーボ効果”により関心を抱くようになりました。

笑いと関係が深い“プラシーボ効果”

ノーマン・カズンズが闘病を経て執筆した著書『笑いと治癒力』では、“プラシーボ”について注目した内容があります。

プラシーボ効果の由来と点滴

プラシーボとはラテン語の「I shallplease」(私は喜ばせる)に由来していて、“placebo”単体では偽薬のことを指しますが、現代では薬によく似た“気休め”ものという意味で使われます。

プラシーボ効果とは“placebo effect”のことで、思い込みによる何等かの改善の効果のことです。

医学の世界では、例えば生理食塩水(点滴)がプラシーボにあたります。

生理食塩水には本来薬理効果はありません。

でも、食中毒などで嘔吐下痢症状がひどく、口から何も飲めないと脱水症状が心配されます。

そういう場合に限っては点滴が有効で、直接静脈に注射して吸収しやすい生理食塩水で“水分補給”するのです。

ではなぜ口から飲める状態でも点滴を打つ場合があるのか。

それは、「点滴を打てばよくなる」という暗示効果があるからです。

体調がすぐれない時は気持ちも塞ぎこみがちですよね。

そんな時にプラシーボ効果を使うと“元気になった気になる”ため、例えばただの風邪でも点滴を打ってくれる病院もあります。

ノーマン・カズンズによるプラシーボ効果の実例

ノーマン・カズンズはこのプラシーボ効果に注目し、その効果をわかりやすく実例とともにまとめました。

それがこちら。

  • あるパーキンソン病患者は、薬だといってプラシーボを与えられ、震えが著しく減った。一方、同じ物質をこっそり牛乳に入れて飲ませたところ、震えは再発したという。
  • ある患者集団に、抗ヒスタミン剤といってプラシーボを与えたところ、その4%の患者は抗ヒスタミン剤の特徴である眠気を訴えた。
  • A・レズリーはモルヒネ中毒患者たちにプラシーボ(生理食塩水注射)を施したところ、その注射を中止するまでの間、禁断症状が起こらなかった。

このように、人は薬剤の力を借りなくとも“良くなる”という前向きな思い込み1つで体の状態を良くすることができるのです!

“病は気から”とよく言いますが、これにはきちんとした根拠があったのです。

ノーマン・カズンズの闘病や著書は、健康と心の状態とのかかわりがよくわかる例だと思います。

“笑うこと”は前向きで明るいポジティブな気持ちの現れですので、

笑うことは何よりの“薬”であるともいえるわけです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回は、アメリカの雑誌を参考に「笑いの影響」について解説し、実例として難病を克服したノーマン・カズンズ氏をご紹介しました。

無理に笑う必要はありませんが、毎日1つでもいいので、ふふっと笑える瞬間があるといいですよね。

日々忙しくて、大笑いしていなかったなという方、久々の友人に連絡をとって、おもしろかったことを思い出して笑ってみてもいいと思いますし、お気に入りの芸人や番組を見る習慣を作ってもいいかもしれません。

疲れがち・体調を崩しがちなこの時期、少し意識して”笑い”ネタを探してみてはいかがでしょうか。