便秘でお困りの方、同時に睡眠不足ではないですか?

逆に眠りの質が低くて、いつも寝た気がしない・日中眠たいという方、同時に便秘気味ではないでしょうか?

便通と睡眠の状態は深い関係があります。

今回は、それを証明した代表的な研究結果とともに、便通改善のための睡眠の質について紹介していきます!

実はあまり知られていない便秘と睡眠健康

便秘になるということは、消化官が便を外に出す運動が正常に働いていないということです。

つまり、消化器疾患に罹っている状態だともいいかえられます。

実はこの消化器疾患と睡眠状態との関連は、ようやく解明されてきたこともあり、そんなに知られていません。

そして、この関係を推測するバックグラウンドには、睡眠状態と生活習慣病との関連がありました。

背景にある睡眠状態と生活習慣病の関連

がん、心臓病、脳卒中などに代表される生活習慣病は、睡眠状態と関わりがあります。

生活習慣病は、その名の通り「食事・運動・睡眠」などからなる生活習慣の悪化が原因で発症する病気だから、当たり前といえば当たり前なのですが。

生活習慣病について詳しくはこちらの記事に書いてますのでご参考まで。

睡眠状態と生活習慣病の関連について具体的には、

  • 睡眠不足は脳の働きを悪くする
  • それに伴い循環器の機能も低下させ、循環器疾患のリスクを高め
  • 免疫機能も低下させ、免疫と深い関係があるうつ病などのリスクを高める

このようなことが多くの研究から明らかになっています。

詳しくはこちらにも書いていますのでご興味あればどうぞ。

さてこの生活習慣病と睡眠状態との関連が、どんなふうに便秘につながるのかといいますと…

心理的ストレスは便秘のリスクファクター

この睡眠の状態とは、

  • 心理的なストレスによる睡眠障害
  • 環境ストレスによる睡眠障害

この2つのテーマから論じられることが多いです。

心理的なストレスとは、例えば、

  • 試験の前や大事なプレゼン前などの緊張状態
  • キャパオーバーな仕事量による重圧
  • 人間関係の悪化

などが原因でストレスと抱える状態をいいます。

環境ストレスとは、例えば、

  • 寝室の騒音がひどい
  • 寝室が暑い・寒い
  • 職業柄、自宅の寝室で寝れない生活をしている

など、眠る環境が悪いことが原因のストレスをいいます。

そして、このうち、心理的なストレスは便秘のリスクファクターなのです。

さらに、ストレスが溜まると胃腸の機能が悪くなる、というのは皆さんご存知の通り。

多くの研究から便秘と睡眠の関係について仮説がたった

そんなこんなで、いろいろな研究がつながってくるわけで、ここへきてようやくある仮説が立ちました。

消化器運動(胃腸の機能)の状態と睡眠の健康状態は直接関係があるのでは?!

すべての研究の始まりは、裏打ちされた背景から、

  • 「ではこれも似たようにこうかもしれない」
  • 「ここまでわかっているが、ここの部分がまだわかっていない」
  • 「根拠を示すための方法がこれまでの研究では弱い」
  • 「だれも切り込んでいないテーマだ」

というパターンで仮説を立てます。

実際、研究を開始するにあたっては、4のケースは「世紀の大発見レベル」なのでそうそうありませんが。

急に飛び込んできた新種の発見とか、これまでの定説を覆す発想とか、そんなようなものがないと、どんなに優秀な研究者でも難しいものです。

さて戻りますね。

便通と睡眠状態について、ではちゃんと確かめるために調査しましょうということで、研究チームによる調査が行われました。

便通状態と睡眠健康に関する疫学的調査の概要

調査の概要と結果がこちらです。

調査対象と調査方法

東京圏在住の20~45歳の女性444人を対象に、便通と睡眠の状態についてのアンケートに答えてもらいました。

便通の状態は、過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)と機能性便秘(きのうせいべんぴ)の診断基準を使いました。

過敏性腸症候群は、検査で異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感があって、便秘や下痢が長く続く病気です。

機能性便秘とは、腸管機能の異常による便秘のことで、便秘を訴える人の大半がこれ。

便秘はこの機能性便秘器質性便秘に大きくわかれます。

ちなみに、器質性便秘は、薬剤の影響や病気の影響など、いわゆる身体の機能そのものが原因ではないケースの便秘を指します。

この研究では、過敏性腸症候群と機能性便秘の指標は、便秘関連の診断基準の代表であるROMEⅡ基準を使いました。

その具体的な内容は、

腹痛あるいは腹部不快感が、12ヶ月の中の連続とは限らない12週間以上を占め、その腹痛あるいは腹部不快感が、

  • 排便によって軽快する
  • 排便頻度の変化で始まる
  • 便性状の変化で始まる

これらのうち2項目以上の症状を伴うものと定義されています。

睡眠の状態については、睡眠健康危険度で調べています。

睡眠健康危険度は、睡眠状態を評価する指標で、学術的にもよく使われているものです。

  • 熟睡できているか
  • 夜間の排尿回数
  • 早朝に目覚めてしまう
  • 寝ぼけ状態か
  • いびき
  • 睡眠薬を使っている

などの項目があって、その程度によって点数化され、「睡眠健康危険度総得点」として結果がでます。

まとめると、睡眠状態と便通の状態についてはそれぞれアンケートで調査しましたよということでした。

そして、

  • 機能性便秘のグループ
  • 過敏性腸症候群のグループ
  • 便通状態が正常のグループ

この3つで、睡眠の状態を比較してみました。

ご興味ある方もいらっしゃるかもと思い、研究の核となる仮説と方法について、ちょっと突っ込んでご説明いたしました。

調査の結果

さて、調査の結果、過敏性腸症候群のグループ・機能性便秘&過敏性腸症候群併発グループは、便通状態が正常のグループに比べて、睡眠があまり良質ではなかったということが明らかになりました。

下記の図は、縦軸の「Score」が睡眠健康危険度の得点、横軸は便通状態ごとのグループです。

  • Cont:(コントロール群):便通状態が正常のグループ
  • FC:機能性便秘のグループ
  • IBS:過敏性腸症候群のグループ

睡眠健康危険度のScoreが高いほど、良質な睡眠がとれていないということを意味します。

出典:小野 茂之 et al. 東京圏の成人女性を対象とした便通状態と睡眠健康に関する疫学的調査: 女性心身医学 Vol. 10 (2005) No. 2 p. 67-75

つまり、便通状態が正常(Cont)のグループが睡眠健康危険度が一番低く、過敏性腸症候群(IBS)のグループが最も高いということです。

「**」は、このグループ間の比較を統計的に計算したときに、ちゃんと有意な差がありましたよということを示すマークです。

このマークは、計算結果で出てくる「p値」とよばれる値が、多くの場合0.05より小さければつけてOKなマーク。

0.05以上の場合は、見た目のグラフを見たところグループに差はあるけれども、それは統計的に差があるとはいえなくなります。

この辺の統計の言い回しについては、ちょっと説明不足ではありますが、詳しく知りたい方は統計の基本から勉強してくださいね。

つまり、グラフでは機能性便秘(FC)のグループは、便秘が正常のグループ(Cont)よりも睡眠健康危険度が高いように見えますが、p=0.06のため、統計上の差はありませんよということ。

だから、こちらの研究結果をニュースにした記事はほかにもありますが、「機能性便秘の人は便秘が正常の人より睡眠状態が良質だ」と断言している記事は間違っていますのでご注意を。

さて、調査結果に戻りましょう。

睡眠状態が悪いグループの内約をみてみると、具体的には、

  • 平日の睡眠時間が短い
  • 昼間の眠気が強い
  • 就床時刻が不規則
  • 寝ぼけや悪夢
  • 金縛りなどの症状(睡眠時随伴症)

これらに当てはまる人が多い傾向があることがわかりました。

いかがです?

当てはまる方も多いのではないでしょうか。

この研究では、調査対象は全て女性でしたが、男性でも同じ傾向がみられることが別の論文でも明らかになっています。

研究チームは、今後の睡眠状態を評価するうえで、便通状態は睡眠に影響を与えるストレス要因として検討できるといっています。

睡眠と便通の関連のメカニズム

論文の共著者である白川先生は、睡眠化学・脳生理学を専門としており、調査結果の理由についてこんなふうに考えています。

睡眠が足りないと腸のぜん動運動が低下しやすい

睡眠不足で便通が悪くなる理由は、

  • 自律神経の乱れ
  • 寝る前のドカ食い
  • 生体リズムの乱れ

があげられるとのこと。

自律神経の乱れ

睡眠が足りないと、交感神経と副交感神経でバランスをとっている自律神経が乱れてしまいます。

消化管の運動は副交感神経に支配されているため、自律神経のバランスの乱れによって副交感神経の動きが悪くなると、腸のぜん動運動も低下してしまうのです。

逆に、副交感神経が過剰に働き過ぎると、腸管が働きすぎて、過敏性腸症候群になる原因をつくってしまいます。

寝る前のドカ食い

次に寝る前のドカ食い。

寝る直前に食べると太るとか寝つきが良くないとか朝スッキリしていないとか、経験のある方も多いはず。

寝る直前に食べると、寝たままでも、がんばって食べたものを消化させるために身体が働いてしまいます

本来はすべて消化しきったところで、身体の機能は休息に入りたいところが、そうもいかない状態になってしまう。

これが睡眠の質を下げる原因になります。

睡眠の質が下がると、前述のとおり腸の働きが鈍くなり、便秘へ一直線というわけです。

生体リズムの乱れ

白川先生がいう生体リズムの乱れは、自律神経のバランスの乱れとつながっています。

消化管の働きは、日中活発に・夜間は穏やかになります。

休息モードと覚醒モードを上手に切り替えている状態が、寝る時間や起きるが不規則だったりすると、消化管のリズムも乱れてしまいます。

これが便秘の原因となるとのこと。

ご理解いただけましたか?

まとめ

全部まとめると、便秘と睡眠は関係があって、睡眠を改善すれば便秘の改善につながる可能性が明らかになったということです。

特に、

  • 平日の睡眠時間が短い
  • 昼間の眠気が強い
  • 就床時刻が不規則
  • 寝ぼけや悪夢
  • 金縛りなどの症状(睡眠時随伴症)

これに当てはまる方は、即刻睡眠の改善を検討してください。

そして、寝る前のドカ食いはなるべくやめて、食べるならば消化が良いものにしましょう。

忙しい方も、夜更かししがちな方も、できるだけ寝る時間・起きる時間を決まった時間にすると体調が良くなると思いますよ。

今回も1本の論文から学べたことは多かったですね。

ではまた。