みなさんは生活習慣病にならないように日頃から気を付けていることはありますか?

できるだけ野菜を多く摂る、定期的に運動をする、お酒の量を減らす、タバコをやめる、早寝早起き…

方法はいろいろあり、それぞれが健康に良いことはわかっています。

でも、毎日気をつかっている生活習慣が、その後の自分の将来どれだけ病気の予防につながるかご存知ですか?

そんなの知らない方がほとんどでしょう。

それは、研究データで示すとなると、前向きコホート研究といって、健康な時から生活習慣を記録し続け、その後何十年と追い続けてやっとわかることなので、研究デザインという点で大変労力と資金を要する大規模試験になるからです。

そんな貴重な研究結果から我々の健康被害へのリスクが1つ1つ明らかになっているわけです。

今回ご紹介するのは、米国心臓学会が2015年3月に発表したもので、植物性食品を食習慣にすることで心臓病・脳卒中のリスクが減るというもの。

動物性食品と植物性食品の例とともにさっそくご紹介しましょう。

植物性食品・動物性食品

研究のご紹介より前にまずは、「植物性食品」「動物性食品」について少し記述します。

植物性食品とは

その名の通り、植物体に存在する食品と、それらを加工した加工食品のことです。

例えばこのような食品のことです。

  • 穀類
  • 野菜
  • 果実
  • キノコ
  • 海藻類

植物性食品はビタミン無機質が豊富に含まれています。

加工食品の例でいいますと、

  • トマト缶
  • 野菜の漬物
  • ジャム
  • 乾燥わかめ
  • 野菜・果物ジュース
  • 麦茶・ウーロン茶
  • コーヒー・ココア
  • ドライフルーツ
  • チョコレート
  • 豆乳
  • 納豆
  • オリーブオイル・キャノーラ油

植物性食品は、大豆から加工した食品が割と多いです。

このように上げ出したらキリがないのですが、むき出しの野菜や果物を除いて、スーパーに並んでいるパック詰めされた食品はほとんどが加工食品です。

動物性食品とは

動物性食品とは、動物に由来する食品とそれらの加工食品です。

たんぱく質・脂質・ビタミン・無機質がとても豊富に含まれています。

具体的には、

などがあげられ、これらの加工食品としては、

  • シーチキン
  • バター
  • 牛乳
  • こんにゃく
  • ベーコン
  • ハム
  • ソーセージ
  • ヨーグルト
  • プリン

ハムやベーコン・ソーセージを代表とする食肉加工食品をはじめ、卵・乳を原材料とする食品があります。

栄養学の基本は6大栄養素

ちなみに、栄養学の分野では、食品をカテゴライズする際に「植物性食品」「動物性食品」という括りで議論することはあまりありません。

食品それぞれに含まれている栄養素や体にどんなふうに作用するのかで分類するのが一般的だからです。

分類は3種類あります。

  • 栄養素で食品を分類した「6つの基礎食品」
  • 食物繊維を含めない「5大栄養素」
  • 子供向けにわかりやすく分類した「3色食品群」

今回は6つの基礎食品の表をこちらにご紹介しますね。

出典:暮らしの彩りHP

  • 1群:魚・肉・卵・大豆
  • 2群:牛乳・乳製品・骨ごと食べられる魚
  • 3群:緑黄色野菜
  • 4群:その他の野菜・果物
  • 5群:米・パン・めん類・いも
  • 6群:油脂類

このように分類されています。

ちなみに、3色食品群とは、この6つの群を3つにわけたものです。

  • 1群・2群が「体をつくるもとになる食品」
  • 3群・4群が「体の調子を整えるもとになる食品」
  • 5群・6群が「エネルギーのもとになる食品」

わかりやすいので、学校などでよく使われています。

この分類では「植物性食品」「動物性食品」としてわけられませんが、大まかには、1群・2群が「動物性食品」、3群・4群が「植物性食品」にだいたい該当すると考えてよいでしょう。

栄養の分類などについてはこちらの記事にも記述がありますのでご参考に↓

植物性食品摂取と心臓病・脳卒中の死亡リスクとの関連

栄養の基本的な分類についてご理解いただいたところで、当該研究のご紹介です。

イギリスのインペリアル カレッジ ロンドンの研究チームが、欧州10ヵ国の45万人以上を12年間追跡した調査で、野菜を豊富にとる食生活をもつ人は、心臓病や脳卒中で死亡するリスクが低下することが明らかになりました。

この研究結果が、米国心臓学会(AHA)で2015年3月に公表されました。

調査のデザイン

前述しましたとおり、研究デザインは「前向きコホート研究」。

調査に参加したのは欧州10ヵ国に在住する35~70歳の男女45万1,256人でした。

調査を開始する時点で、どの参加者も糖尿病や心臓病などの慢性疾患がありませんでした。

その後、参加者の食事調査とともに、疾患の発症などを記録し、12年間追跡したのです。

研究の中で定義した動物性食品と植物性食品

研究では、動物性食品と植物性食品をそれぞれ、これが該当しますよという形でカテゴリーを決めています。

植物性食品はこちら。

  • 野菜
  • 果物
  • 豆類
  • イモ類
  • ナッツ類
  • シリアル
  • オリーブオイル

そして動物性食品はこちらです。

  • 肉類
  • 乳製品
  • シーフード
  • 動物性油脂(*バターやラード・ヘッドなど)

それぞれイメージは湧きますでしょうか。

ちなみに、バターとマーガリン、似ていると思いますが、バターが動物性油脂なのに対しマーガリンは植物性油脂です。

研究では、それぞれの食品をどれだけ食べたかによってスコアを決め、植物性食品の摂取量でグループ分けをしました。

調査の結果

調査の結果、全食事のうちの植物性食品の割合が70%を超えるグループは、45%未満のグループに比べ、心臓病や脳卒中で死亡するリスクが20%低下したのです。

なお、「そうはいっても性別や年齢や飲酒量などそれぞれの影響もあるのでは?!」と思う方もいらっしゃると思います。

それらの解決として、この調査における解析過程では、年齢・性別・総エネルギー摂取量・肥満度数・喫煙習慣・運動量・飲酒量といった影響を調整した上で結果を算出しています。

結果をまとめると、植物性食品をとることが死亡率の低下につながるというわけです。

原文をご覧になりたい方は米国心臓学会(AHA)のHPよりどうぞ↓

Semi-veggie diet effectively lowers heart disease, stroke risk:American Heart Association Meeting Report Abstract 16

動物性食品を植物性食品に代えるだけでもOK

米国心臓学会は、植物性食品を摂ることだけでなく、動物性食品を植物性食品に代えるだけでも、心血管疾患の予防につながると、過去の研究結果も示しています。

たとえば、

  • パンにバターを塗っている方はマーガリンにする
  • ハンバーグは豆腐で作った豆腐ハンバーグにする
  • 動物性生クリームを植物性ホイップを使う(※作るお菓子によって適さない場合もありますが)
  • ごはんを少なくし、イモ類を使ったおかずを多くする
  • 牛乳を豆乳にする

こんな工夫がお手軽なのではないでしょうか。

でも完全に「代用」するのは難しいので、1日にとる食事の中で、野菜などの植物性食品の比率を増やすことが大事です。

具体的にどんな食品を増やして、どんな食品を減らせばよいのでしょうか。

米国心臓学会では、下記を推奨しています。

増やしたい食品

  • 野菜
  • 果物
  • 全粒粉
  • 豆類
  • ナッツ類
  • 低脂肪の乳製品
  • 脂肪を落とした肉類や魚

制限したい食品

  • 赤身肉
  • 飽和脂肪酸
  • トランス脂肪酸
  • 塩分
  • 糖分

動物性食品の特徴といえば、エネルギー源になる栄養素であるタンパク質

植物性食品はビタミンやミネラルが豊富でどちらも欠かせない栄養素です。

つまり、植物性食品へ置き換える場合は、タンパク質を多く含んでいる大豆や穀類が良ということ。

そんなわけで、牛乳の代わりに豆乳が流行ったり、大豆のタンパクを加工して食肉風にしたものが売られていたりしているわけです。

結局はバランスが大事

とはいえ、全てを植物性食品に、食事のほとんどが植物性食品という極端な食事はかえって栄養バランスが悪くしてしまいます。

つまり、タンパク質をきちんと代用していればOKというわけではないということです。

日本食肉消費総合センターによると、タンパク質の評価は、必須アミノ酸の量とバランスで決まるということです。

必須アミノ酸は体内で作れるものではないので食物から摂取する必要があります。

タンパク質の栄養価を示すアミノ酸スコアを比較してみると、

  • ほとんどの動物性タンパク質のアミノ酸スコア:100
  • 植物性タンパク質代表の大豆:86
  • 精白米:65
  • 小麦粉:44

このスコアは単なる「量」ではなく、アミノ酸の種類で不足しているものがあるということなので、単にたくさん食べればいいというわけではありません。

豚肉、大分、精白米それぞれに含まれるアミノ酸の量をご覧ください。

豚肉に多く含まれているものの、リジンや含硫アミノ酸やスレオニンは、大豆には少ないですよね。

出典:改定日本食品アミノ酸組成表

つまるところ、植物性タンパク質ばかりでなく、肉や魚の動物性タンパク質の摂取も必要だということです。

理想は、SMP比が3:4:3になるような食事が理想とされています。

SMP比とは食事から摂取する脂肪酸のバランスのこと。

  • 飽和脂肪酸(S = Saturated fatty acid)
  • 一価不飽和脂肪酸(M = Monounsaturated fatty acid)
  • 多価不飽和脂肪酸(P = Poly un-saturated fatty acid)

この比率が3 :4 : 3であることが望ましいということです。

ちなみに、このSMP比は厚労省に定められた「日本人の栄養所要量」で記載がありましたが、2005年の改定以後なくなりました。

ので、今回この用語について言及するのはやめておきますが、現状の日本人の食事は、この比率で食事ができているので安心してOKとのことです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

結局はバランスが大事!と申し上げましたが、普段の食事を振り返ってみて、動物性食品ばかり食べてたという方は、この機会にぜひ見直してみてはいかがでしょうか。

ファストフード店でポテトやハンバーガーを食べたのはたまには美味しいし安いしお手軽ですし、時間がないから立ち食いうどん・そば屋さんで野菜を摂らずに済ませてしまうことも多いと思います。

でも、その食事に毎食100円プラスして植物性食品を加えてみてはいかがでしょう。

それで将来の疾患予防と病気になったときの医療費をなくせるならば、十分安上がりだと私は思います。

これこそ予防医学の考え方ですね。