日本は超高齢化国家。

でもきっと、ウェブの使用に慣れている若い世代の方々は、日々を生きる中で”高齢化”を感じる瞬間はあまり多くはないのではないでしょうか。

私が最近高齢化を実感した瞬間は、知人の葬儀で、火葬場が混んでいて死後2週間も火葬できなかったときでした。

ご遺体は遺体安置所で”宿泊料”を払って火葬まで待機となります。

これがいわゆる「待機遺体」

世間でよく取り上げられるのは待機児童問題ですが、実はご遺体の待機問題も大変深刻なのです。

また知人のある起業家に「これから新しいビジネスをするならどの分野でやりますか?」と聞いたことがあります。

答えは「葬儀ビジネス」。

高齢の方が今後増えることは自明で、だれもが必要とする最期のセレモニー。

介護サービス同様に、葬儀関連のサービスも新規参入が多く多様化してきています。

そんな環境を構築したそもそもの日本の高齢化。

医療の点から述べると、65歳以上の高齢者は介護保険で自己負担が1割~3割。

さまざまな疾病から手軽に利用する医療費がかさみ、国の医療費赤字が膨れ上がっています。

そして、予防医学がこんなにも流行っているのは、膨れ上がった医療費赤字削減のために、防げる疾病を予防しようというのが目的なのです。

このように高齢化を背景にした様々な環境の変化は、きっと若い世代が老年期を迎え病気になった時はじめて感じること。

でも現代は医療も発達しており、元気な高齢者が多く、高齢化の深刻さや介護サービスのシステムが身近でなく知識が薄い方が多いと思います。

義務教育のカリキュラム内に”介護福祉”はありませんしね。

今回は、高齢化に関する一般的な統計情報とともに、日本の介護サービスの仕組みを簡単に紹介しようと思います。

数字で理解する日本の高齢化社会

高齢化を語る前にまずは日本の総人口について。

2015年10月1日時点で、日本の総人口は1億2,711万人でした。

年齢別にその内訳で特徴的なのがこちらです。

  • 65歳以上の高齢者は3,392万人(総人口に占める割合:26.7%)
  • 65歳以上の高齢者のうち 男性は1,466万人、女性は1,926万人
  • 「65~74歳人口」 は1,752万人(13.8%)
  • 「75 歳以上人口」は1,641万人(12.9%)
  • 15~64歳の生産年齢人口は、1995 年に8,716万人でピークだったのがその後減少

つまり、現時点で65歳以上の高齢者の割合が全人口のうち3割に近づいていて、一方子どもが減っているということ。

この割合が近い将来どうなる?!

最初に結論から。

現状の統計値から将来の人口がどうなっていくか推計が算出されています。

2060年の推計が、

  • 2.5人に1人が65歳以上
  • 4人に1人が 75歳以上

例えば、通勤時間帯を除き、日中電車に乗り込んだときに、1車両の約3分の1が65歳以上の高齢者になるということです。

妊婦や疾病を抱える方や子連れのための座席を確保するとなったら、車両の半分は優先席にしても足りないのではないでしょうか。

さて、高齢者人口は、「団塊の世代」を中心にその人口割合が大きく左右されることとなっています。

団塊の世代とは、戦後の第1次ベビーブームの時に生まれた世代のことです。

1971年~1974年に生まれた方のことを指します。

この団塊の世代が2015年に初めて65歳以上となり2025年 には3,657万人に達する予想です。

その後、高齢者人口は増加を続け、2042年 に3,878万人でピークを迎える推計となっています。

出典:内閣府「平成28年版高齢社会白書(全体版)平成27年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」

一方総人口は減少に転じるとされていますが、その分、全人口に占める高齢者の割合が上昇を続け、2035年にはなんと 33.4%が高齢者となる予想です。

この時点で、3人に1人が高齢者ということです。

高齢者の割合が増えることでどんな問題が生じるのでしょうか。

皆さんは、俗にいう「2017年問題」をご存じでしょうか。

団塊の世代絡みの課題が山積する2017年問題

2017年問題とは、団塊の世代が2017年に最初に70歳を迎える年ということで、それに影響される次のような問題のことです。

  • 企業の後継者問題
  • 介護離職問題

企業では、団塊の世代の経営者層の動向に多くの影響が現れると予想されています。

東京商工リサーチによる「2014年全国社長の年齢調査」によると、2014年の段階で、企業の社長の22.5%は70代以上とのことです。

つまり2014年の時点で5人に1人が70代以上の社長で、年を追うごとにその割合は増加しているのです。

高齢の社長でも優秀な企業は多くありますが、同調査で明らかになったことが、

  • 社長年齢が高いほど赤字企業が多い
  • 減収減益企業の比率は社長の高齢化とともに上昇している
  • 休廃業や解散企業のうちの約40%の企業が、社長が70代以上

であるということで、事業の承継がスムーズにいっていないということですよね。

つまり、今後、企業の廃業・倒産の増加が目立ってくることが考えられていて、それに伴い、失業率にも関連してくるだろうと予測されています。

また、70歳を超えると、生活をするのに介護を必要とする人の割合が一気に高くなります。

要介護の出現率は、

  • 65~69歳:3%
  • 70~74歳:6%
  • 75~79歳:14%

このようになっていて、介護の担い手になるであろう団塊の世代の子供世代である”団塊ジュニア”の層に介護離職が続出するとも考えられています。

団塊ジュニアとは、1947年~1949年生まれの方で、今年43歳~45歳でしょうか。

この年代は企業でいう経営層。

役職者が多いと思います。

そんな年代の方たちが介護を理由に第1線から遠ざかるということは、日本経済にとって大打撃です。

さらに、団塊ジュニア世代の特徴は、

  • 兄弟が少ない
  • 生涯未婚率が高い
  • 共働きが多い
  • 晩婚化・高齢出産化によるダブルケア(親の介護と子育ての双方を同時に担う)が多い

と考えられています。

介護離職を減らすための国の取り組みはこんなかんじ。

国の対策①「介護離職ゼロ」

貴重な生産年齢人口を確保するために、安倍政権では2015年に「介護離職ゼロ」を掲げた方策を発表しました。

内容は、家族が介護をしなければならない状況を何とか打破しようというもので、

要介護者が介護サービスに頼って生活できる、全て介護サービスに任せられるよう、介護サービス事業所を増やしたり、介護職員の処遇改善で介護現場で働く人を増やし・離職者を減らす等の対策を打ち出しました。

こちらはアベノミクスの肝になる改革のはずで、当初は期待されていましたが、検討違いの支援や中途半端な取り組みで、現場の状況は何ら改善に至っていないとのことで、混乱が生じています。

出典:民進党HP【衆院予算委】介護離職ゼロに逆行する安倍政権の要介護者切り政策見直しを初鹿議員

介護離職ゼロの方策については、議論が続いており、2020年介護離職ゼロの実現に向けては茨の道ではあります。

単純に考えても、介護サービスの質を上げるということは、職員の質を上げ・サービス内容を拡充させるということ。

つまり、そこに要する費用が、利用者への利用料となり現状よりも上乗せされてかかってくるということです。

利用料が高額になれば、利用できるのは富裕層だけ。

需要がなくなれば事業所の経営が立ち行かなくなり倒産。

結局現場の改善にはつながらないという問題が生じます。

つまり、現行の介護保険制度でその内容だけちょっといじってちょっと支援するだけでは、何も改善できないわけです。

要介護者を取り巻く環境で困窮する人々の悩みは切実です。

ぜひとも実りある議論を展開してほしいなと思います。

国の対策②「育児・介護休業法の改正」

さて、就業者への支援という点における国の施策としてはもうひとつ、育児・介護休業法が今年1月1日から改正施行されました。

改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法が目指しているのは、

妊娠・出産・育児期や家族の介護が必要な時期に、男女ともに離職することなく働き続けること ができるよう、仕事と家庭が両立できる社会の実現を目指し、雇用環境を整備する

こと。

改正の具体的な内容はこちらです。

出典:厚生労働省「改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法の概要」

改正は、制度を利用している就業者の声から、より利便性の高い内容への変更となりました。

家族が急に介護が必要になるケースはたくさんありますが、例えば急病で緊急に入院することになった場合。

退院までは病院にいれますが、退院後、病み上がりでいきなり普段の生活をしろと言ってもそれは無理です。

特に歩行が難しくなってしまった場合や四肢の動作に問題がある場合、ストマ利用になってしまった場合など。

退院後は本人が回復し自立した生活ができるようになるまでは集中した在宅での介護が必要です。

介護サービスの利用も可能ですが、介護給付の範囲外でも日常の買い物や食事などの生活のサポートは、給付内ではまかなえないケースがあり、家族のサポートがどうしても必要です。

そんな時に取得できるのが介護休業

年間93日を、年に3回までなら分割して、介護が集中して必要な時に取得することができます。

また、介護サービス利用時はサービス統括者のケアマネージャーという担当がつきます。

ケアマネージャーは、生活環境や家族のサポート状況等を考慮して適切なサービスを計画してくれる役割がありますが、利用者の状態次第で適宜家族との打ち合わせが必要だったりすることがあります。

そんな際に取得可能なのが介護休暇

これまで1日単位での取得が可能でしたが、それが改正され半日単位でとれるようになりました。

介護に関連する用事は1日まるまる必要とするものでない細々した手続きもたくさんあるため、1日は必要なく半日で済ませて仕事に行く、そんな要望に応えた改正なのかなと思います。

このような国の取り組みはありますが、現実は例えば中小企業などで重要なポストについている場合などは、安易に休暇を取得するのは難しいものですし、介護と就業の両立が難しいのが現実です。

でも事前に制度を知っておくことで、いざというときに慌てず上手に活用することができますよね。

家庭の環境から、介護と仕事とが両立しやすい職場を最初から選択することもできます。

「まだ親の介護は先の話」と油断していると、自分も会社も大きな損害を被ることになりますので、ぜひ今のうちに知識をつけておいてくださいね。

介護保険制度の基本

日本では全国民が制度下にいる介護保険制度。

当たり前なので内容をよく知らない方も多いのではないでしょうか。

介護保険制度は2000年に創設された制度で、社会全体で介護を必要とする人を支えようというものです。

介護保険加入は40歳から

実際に介護保険料の支払が生じるのは40歳から。

介護保険料は住んでいる自治体や所得額に応じて決まります。

徴収した介護保険料と公費を財源として、40歳~64歳で医療保険に加入している人で、何等かの疾病にともない介護サービスが必要になった人、そして65歳以上の要介護者には、1割の自己負担でサービスが利用できるようになっています。

ちなみに、制度を調べていると、第1号被保険者・第2号被保険者という言い回しが出てきますが、

  • 第1号被保険者:40歳~64歳
  • 第2号被保険者:65歳~

です。

厚生労働省が作成した介護保険制度の仕組みの図で一番わかりやすいのがこちら。

出典:厚生労働省「介護保険について」

被保険者は決められた保険料を国に支払い、その財源と公費が介護サービス利用料の補助金になります。

被保険者の中で介護が必要になった人が介護サービスを利用した際に、利用料が1割で済むよう、残り9割を補助金で賄うという仕組みです。

実際には、給付金内で不自由なく生活できるサポートを全て整備するのは難しい場合が多いのですが、いざというときに金銭面で困らずサービスが利用できるように整備されているのです。

どんなサービスが利用できるの?

介護サービスが利用できるといっても、実際どんなサポートがあるのかご存じでしょうか?

ここでは1つ1つ詳しくはご紹介しませんが、ざっとこちらのようなサービスの利用ができますよ。

もちろん、介護がどれだけ必要かによって受けれらる給付額が変わってきますので、それに応じてということにはなりますが。

出典:厚生労働省「介護保険について」

今よく話題になっているのが施設系サービスの入所待ち

施設系サービスは特別養護老人ホームが代表とされます。

特別養護老人ホームは、介護度の高い(認知症が強い・他の疾患もあり)高齢者を対象にした施設サービスで、基本はそこで暮らす生活の場。

介護が必要な食事や排せつや入浴を、介護職員に手伝ってもらって、施設を拠点をした生活をします。

1日中介護の手が必要な高齢の家族がいる家庭では、特別養護老人ホームへの入所を希望する場合が多く、希望に対する事業所が少ないことから入所待ちが社会問題となっています。

介護ニーズの高まりとともに、民間企業が母体となって運営する「有料老人ホーム」なども増えてきてはいますが、利用料が高額なことから、一部の富裕層が利用する形となっています。

こうした事態から、国は在宅への移行を推進していますが、自宅で十分な介護・看護のサービスを受けることができるには程遠い環境整備の遅れが課題です。

このへんは、介護・看護の専門分野の最先端の議論になってきますので、今回は掘り下げません。

では、介護サービスを利用する方法をご紹介しましょう。

介護サービス利用の流れ

実際に当事者が近くにいないと、または自身が要介護者にならないと実感が湧かないものですが、介護サービスを利用するにあたり必ず必要なのが”介護認定”

先に申し上げますが、この介護認定、絶対必要なうえに、介護サービス利用が現実味を帯びる前に申請しないと間に合わないのでご注意が必要です。

まずはざっとこんな流れでサービス利用が始まります。

  • 介護認定調査の申請をする
  • ケアマネージャーがつく
  • 要介護認定の調査、判定がある
  • 認定結果がでる
  • ケアマネージャーがケアプランを作成する
  • サービス利用開始

介護認定とは、本当に介護が必要か?どの程度の介護が必要か?を判定されるものです。

判定結果を介護度とよび、介護度が高いほど、給付が高くなります。

介護認定調査の申請は、お住まいの市区町村の役所で申し出ることができます。

誰が行ってもOKです。

介護サービスを受ける場合、必ずケアマネージャーという役割の方が担当につきます。

既にケアマネージャーが決まっている場合は、介護認定の手続きも代行してやってくれますよ。

ケアマネージャーは、いろんなルートで紹介されますし、自分で探すこともできます。

このような制度のことや家族の状態でどんなサポートが受けられそうかといったことを相談できる窓口が、お住まいの地域や病院に必ずあります。

地域でしたら、名称は違うかもしれませんが地域ケアプラザ・○○包括支援センターというところがあると思います。

病院でしたら、大きな病院なら地域連携室が必ずあると思いますので、そこで相談できます。

その相談先で直接ケアマネージャーを紹介してもらうことも可能です。

介護サービスを受けるにあたり、ケアマネージャーが中核になってきますので、相性の良い方を紹介してもらうことがポイントです。

これはどこにも載っていませんが、ものすごく大事なポイントです。

介護認定調査の申請をしたら、早くて1週間後には調査員が来て、四肢の動作や歩行の状態などをチェックします。

その約1か月後に介護認定がおります。(おりない場合もあります…)

正式には、介護認定が下りた後から介護サービスを利用することができることとなっています。

老々介護になってしまっているなと感じたら、家族のサポートに通う頻度が増えてきたと感じたら、入院後の生活が心配になる状態の時など、

家族以外のサポートがないかと感じたら、まずは早急に介護認定を申請しましょう。

認定がおりたら、ケアプランといって、いつどんな介護サービスを受けて~といったスケジューリング的なところを、本人の生活環境を考慮に入れた上での計画をケアマネージャーが立ててくれます。

その後、ようやくサービス利用開始となります。

気を付けたいこと

気を付けなければならないのが、例えば急な入院で、それまで介護認定をしていなったものの退院後急に介護が必要だとなったケース

病院では、家族のサポートがあると判断した場合などは、介護サービスの紹介や丁寧に説明してくれたりなどは期待できません。

もちろん病院にもよりますが。

本人と家族の希望があれば、個別に説明してくれることはありますが、基本は自己申告だと思ってください。

それが地域に根付いた総合病院の現実ですから。

つまり、介護サービス利用の制度を本人・家族が何も知らない場合は、退院後に介護が必要な状態で自宅に帰され、いきなり家族が介護するしかなくなるんです。

だから知っておかなくてはならない制度の使い方。

高齢の家族が入院したら、退院後の生活を想像してみてください。

  • 仕事をしているため家族ではサポートできない
  • プロに任せるほうが安心
  • 家族に負担をかけたくない

そのような場合は、介護サービスの利用を念頭に、介護認定がないならまずは早急に手続きを進めましょう。

前述しましたが、介護認定がおりるのは約1月かかります。

その間サービスが受けられないかというとそうではなく、認定がおりる暫定でサービスを開始することができます

でも、もしも認定がおりなかったら事業所が困ってしまうため、中には暫定でのサービス開始はお断りのところもあります。

いずれも、介護認定なしには何の給付も受けられないことをご理解ください。

おわりに

高齢化がどんな問題を引き起こしているのか、また介護保険制度のしくみを少しご理解いただけましたでしょうか。

元気なうちは直面しないと現実味がわかないものですが、残念ながら日本の介護・看護サービスの現状は知らないと損する状況です。

高齢で、歩行も困難になってきているのに、たくさんの診療科への通院をしていて、10剤以上の薬を飲んでいる。

生活をサポートしてくれるサービスを受けられることを知らずに不安を抱えながらの老々介護になってしまっている。

それはひとえに連携した医療福祉サービスが機能していないからです。

自己申告すれば、たくさんの診療科を1本にすることも、よくわからないサービスについて教えてくれて手続きを進めることもできるのです。

問題は、生活環境・通院・どういう生き方を望んでいるかなどを含め、トータルでサービスをコーディネートできる人材が日本には多くいないこと。

だから、生活を困窮させずにサービスを受けるためには、国民全員が制度を知る必要があります。

特に団塊ジュニアの世代、そしてその子供世代は、一気に膨れ上がる高齢化に伴うさまざまな問題に近い将来直面します。

他人事ではなく、まずは知識を身に着けることが大事です。

私も30代に突入したばかりながら、祖父母の介護に直面した経験があります。

たまたま自身が専門家で知識があったことから手続きがスムーズに運びました。

が、本人はもちろん、私の両親・叔母等等は何も制度を知らず、何をすればよいかわからん状態で不安を抱えていたようです。

きっと同じようなご家庭は多いのではないでしょうか?

前述のとおり、本当はもっと分かりやすくオープンな制度になるべきなのですが、そうでないのが現状です。

学校でも教えてくれない介護のことは、我々が自分たちで知っていくしかないのです。

がんばりましょう!