大豆のタンパク質「β-コングリシニン」で脂肪肝を予防するメカニズム

突然ですが、みなさんの「肝臓」は元気ですか?

肝臓のトラブルといえば、なんとなくイメージするのは「お酒」「アルコール」ですよね。

お酒を飲んで、体内に吸収されたアルコールは、肝臓で分解され、無害な物質に変化していくというのは有名なお話。

適量の飲酒であればそれほど問題ではありませんが、大量のお酒を長期間にわたって飲むと、肝臓の負担が大きくなってしまいます。

年末年始や歓送迎会など、お酒を飲む機会が多い時期には、特に気になるところです。

私も例にもれず、年始の健康診断ではちょっと高めの数字を見ることがあります……。

肝臓の負担が増えすぎると、肝臓の周辺や内部に脂肪が付く「脂肪肝」を引き起こしやすくなります。

さらに進行すると、重大な肝臓の病気につながりますので、お酒には気を付けたいものです。

さて、近年の研究では、大豆に含まれるタンパク質の一種が、この「脂肪肝」を予防するのに有効なのではないかと言われています。

今回は、気になる大豆のタンパク質「β-コングリシニン」に関するお話です。

脂肪肝とは?

「脂肪肝」は、読んで字のごとく「肝臓に脂肪が付いた状態」を指します。

この肝臓、医療の世界では「沈黙の臓器」とも呼ばれていることをご存知でしょうか。

その理由は、何かトラブルがあっても痛みなどの症状がほとんどなく、血液検査や超音波検査などでようやく発見されることが多いため。

自覚症状があっても「何となく疲れやすい」「肩がこる」程度のため、大したことはないと思いがちなのです。

そして異常が見つかった時には「手遅れです」なんてこともあるくらいですから、普段から気を付けたいですね。

さて「脂肪肝」という病気の名前は有名ですが、その原因によって2種類に分類されています。

ひとつは飲酒による脂肪肝で「アルコール性脂肪肝」と呼ばれているもの。

飲み過ぎによって肝臓が悪くなるというイメージで、よく知られているパターンがこちらです。

それに対し、お酒を飲まないのに発症する脂肪肝は「非アルコール性脂肪肝」と呼ばれます。

まずは、この2種類について説明します。

アルコール性脂肪肝

アルコール性脂肪肝は、アルコールを大量に、長期間にわたって摂取することで起こる脂肪肝です。

お酒を飲んだ後、体内に吸収されたアルコールのほとんどは肝臓で分解されて、無害な物質になって排出されます。

アルコールに限らず、肝臓は人体にとって有害な「毒」が体内に入ってきたとき、それを解毒しています。

実は肝臓にはこの解毒機能のほかに、中性脂肪を代謝する機能もあるのです。

しかし、毒であるアルコールを放置しているわけにはいきませんから、肝臓は脂質の代謝よりも、アルコールの解毒を優先せざるを得ません。

通常はすぐに終わらせて脂質の代謝に取り掛かりたいのですが、毎日の飲み会で、大量のアルコールが長期間にわたって入ってくると、困ったことになります。

本来やるべき脂肪の代謝がどんどん後回しになってしまい、代謝できなかった脂肪が余っていき、その結果、肝臓の内部や周囲に脂肪がたまってしまうのです。

そのまま大量の飲酒を続けていると症状が進行し「アルコール性肝炎」や「アルコール性肝線維症」、最終的には「アルコール性肝硬変」になる危険性があります。

非アルコール性脂肪肝

食べ過ぎ

アルコールを飲んでいない、B型やC型の肝炎ではない、そのほかに脂肪肝になる原因がない……という場合には、非アルコール性脂肪肝と診断されます。

この脂肪肝の原因は、ストレスや昼夜逆転の生活、食べ過ぎ、内臓脂肪の蓄積など。

食事によって体内に入った糖質や脂質は、消化吸収されたあと、肝臓で中性脂肪に変化します。

食事から摂取するエネルギーが多すぎたり、運動不足が続いたりすると、使いきれなかった中性脂肪が肝臓にたまってしまうのです。

一見やせていても、実は肝臓に脂肪がたまっているということもありますので「太っている人だけが気を付ければいい」わけではないのが怖いところ。

むしろ、行き過ぎた食事制限などの無理なダイエットには「低栄養性脂肪肝」と呼ばれる脂肪肝のリスクがあるとも言われているのです。

実は日本人の脂肪肝の原因は、飲み過ぎよりも食べ過ぎの「非アルコール性脂肪肝」が多く、メタボリックシンドロームの引き金にもなると指摘されています。

「肝硬変」や「肝臓がん」へ進行する可能性もありますので、まずは予防に努めたいところですね。

大豆のタンパク質「β-コングリシニン」

大豆は「畑の肉」とも呼ばれる通り、タンパク質が豊富な食品。

そのタンパク質の成分のひとつが、この「β-コングリシニン」です。

大豆のタンパク質の約20%を占めており、脂質や糖の代謝改善や肥満の予防など、健康の分野で期待されています。

ちょっと聞きなれないかもしれませんが、実は特定保健用食品(トクホ)にも使われている成分。

血液中の中性脂肪を低下させる機能性があり、中性脂肪の数値が高い方に向けた食品に使用されていた実績があるのです。

この「β-コングリシニン」を摂取することで、非アルコール性脂肪肝の予防に有効であるという報告もあります。

先に説明した通り、非アルコール性脂肪肝は、糖質や脂質の食べ過ぎや運動不足によって、中性脂肪が余ってしまうことが原因。

中性脂肪を下げる「β-コングリシニン」が役立つのも納得ですね。

アルコール性脂肪肝と「β-コングリシニン」

非アルコール性の脂肪肝を予防するのに有効な「β-コングリシニン」ですが、お酒の飲み過ぎによるアルコール性脂肪肝に対してはどうなのでしょうか。

「β-コングリシニン」と、タンパク質の仲間である「カゼイン」との比較をした研究結果がありますので、紹介します。

実験の方法

まずマウスを2つのグループに分けます。

片方のグループにはタンパク質として「β-コングリシニン」を入れたエサを4週間食べさせます。

もう片方グループには「カゼイン」を入れたエサを4週間食べさせます。

その後、それぞれのグループのマウスの中で、一部にアルコールを飲ませました。

(比較のため、アルコールを飲ませないマウスもいます)

実験の結果

カゼイン入りのエサを食べたマウスは、アルコールを飲んでから6時間後に脂肪肝になりました。

一方、β-コングリシニン入りのエサを食べていたマウスは、アルコールを飲んだ後の肝臓脂肪量は増えているものの、その増加量は少なくなりました。

誤差を差し引いても、カゼイン入りのエサを食べたマウスと比較すると、明らかに少なかったのです。

2つのグループの「アルコールを飲んでいないマウス」と「アルコールを飲んだマウス」の肝臓に付いた脂肪の量の比較は、以下の図をご覧ください。

図

【出典】山﨑聖美(2018)大豆たんぱく質のアルコール性脂肪肝発症予防効果(2018.2 健康・栄養ニュース 第59号掲載)

アルコール摂取「なし」の場合、カゼインを食べたグループとβ-コングリシニンを食べたグループには差がありません。

しかし、アルコール摂取「あり」の場合には、β-コングリシニンを食べたグループの方が低いですね。

ということは、脂肪肝を予防するのに有効な可能性があるということです。

脂肪肝を予防するメカニズム

この実験では、β-コングリシニンが脂肪肝を予防するメカニズムについても調べているので、そちらも紹介します。

肝臓には、糖から脂肪酸というエネルギー源を合成する機能があります。

これを「新規脂肪酸合成」と呼ぶのですが、この経路はアルコールを飲むと活性化されてしまうのです。

つまり、アルコールを飲むとエネルギー源である「脂肪酸」が一気にたくさん合成されてしまうため、使いきれずに余ってしまうということ。

余ったエネルギーは、脂肪になってたまってしまうのです。

β-コングリシニン入りのエサを食べていたマウスは、まずこの新規脂肪酸合成の機能が低下しており、脂肪酸の合成量が減っていました。

また、肝臓には余った脂肪酸があると、それを脂肪として肝臓に送り込むシステムが存在します。

このシステムが活性化すると脂肪肝になりやすくなってしまうのですが、アルコールはこのシステムも活性化してしまうのです。

つまり、アルコールは「糖を脂肪酸に変える機能」と「脂肪酸を脂肪にして貯める機能」の両方を活性化させるため、脂肪肝を引き起こしやすくなってしまいます。

β-コングリシニン入りのエサを食べていたマウスは、脂肪酸を脂肪にして貯めるシステムの働きも弱まっており、アルコールを飲んでもあまり活性化しませんでした。

つまり、肝臓が脂肪をため込む機能のうち、複数の部分でβ-コングリシニンが働きを弱らせることで、アルコール性脂肪肝を予防していることが分かったのです。

まとめ

「β-コングリシニン」と脂肪肝についてまとめると、以下のようになります。

  • 脂肪肝には2種類あり、アルコールだけではなく、食べ過ぎによる非アルコール性脂肪肝も要注意!
  • 大豆に含まれるタンパク質「β-コングリシニン」は、血中の中性脂肪を下げる。
  • β-コングリシニンは、余った中性脂肪が原因の、非アルコール性脂肪肝に有効。
  • β-コングリシニンは、肝臓が中性脂肪をため込むシステムを邪魔するため、アルコール性脂肪肝にも有効!

いかがでしたでしょうか?

大豆に含まれる「β-コングリシニン」は、血中の中性脂肪を下げるだけではなく、アルコール性の脂肪肝も予防するという結果は、飲み会の機会が多い方には朗報かもしれません。

たとえば居酒屋のメニューにも「冷奴」「厚揚げ」などの豆腐メニューはよく見かけますし、定番おつまみの「枝豆」にも「β-コングリシニン」は多く含まれます。

普段の食生活に組み込むなら、定食屋さんの小鉢を豆腐や納豆に変える、カフェなら牛乳を豆乳に変えてみる……など、大豆メニューを組み込んでみるのはいかがでしょうか?

私は冷蔵庫に豆乳を常備して、カフェオレやシチューなどを作る際に牛乳の代わりに使っています。

そのまま飲む時は牛乳の方がいいなという方は、コーヒーやお料理に使うのがオススメです。

肝臓が気になる時期は、普段から「β-コングリシニン」を意識して摂ってみるのもいいですね。

とはいえ、くれぐれもお酒の飲み過ぎは禁物ですよ!

肝臓からの追伸

アルコール性脂肪肝も、非アルコール性脂肪肝も、どちらも生活習慣によって引き起こされる病気です。

特に肝臓は、内臓の中でも脂肪が付きやすい臓器として知られています。

まずはバランスのよい食事や適度な運動で予防したいですね。

普段電車や車をよく使われる方は、一駅歩いたり、ちょっと離れた駐車場に停めるなど、ちょっとだけ歩く習慣を意識するのもいいでしょう。

内臓脂肪は皮下脂肪よりも優先して消費されるので、体重が2kg落ちれば症状が改善されることもあります。

日ごろから、食べ過ぎや飲み過ぎには注意しましょう!

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