うつ病と生活習慣病の関係性と予防に期待できるおすすめの栄養素

うつ病は「誰にでもかかる可能性がある病気」というたとえで「心の風邪」と言われることがあります。

しかし、風邪にかかりやすい人や、何年も風邪をひいていないという人がいるように、うつ病も「なりやすい人」と「なりにくい人」がいるのです。

たとえば、周りの期待に応えるために、自分の限界を超えて頑張ってしまうような真面目な性格の方は、うつ病になりやすいと言われています。

自分の限界を超えて頑張り続けた結果、だんだん体と心が疲れて、ストレスにさいなまれるようになるのです。

これは周囲の期待だけではなく、何事も完璧に仕上げなければ気が済まない「完璧主義者」の方は、自分への期待が強く、同じことが言えるでしょう。

また近年の研究では、食事や運動などの生活習慣も、うつ病と関連があるのではないかと言われています。

今回は、生活習慣とうつ病に関する研究結果を紹介します。

うつ病は心の風邪ではなく心の骨折

本題に入る前に、冒頭で書いた「うつ病は心の風邪」という言葉について念のため解説します。

この言葉は「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」という新しい抗うつ薬が登場してきた、1999年ごろから言われ始めました。

その意味は「うつ病は、風邪のように誰にでもかかる可能性がある」また「病院で薬をもらって治療すれば、よくなる」というものです。

しかし、身近な「風邪」という表現は、誤解も招きました。

たとえば

  • たいしたことがない病気
  • ちょっとくらい無理しても大丈夫
  • しばらく放っておけば治る

など、たしかに風邪のイメージだとそうなってもおかしくありません。

しかし、実際にうつ病になった方や医療関係者によれば「風邪のような甘いものじゃない」という意見も聞かれます。

時には「たいしたことがない」という周囲の誤解が、患者さんをさらに苦しめることもあるくらいです。

よくなるまでの時間も風邪よりも長くかかりますので、表現としては「うつ病は心の骨折(疲労骨折)」という方が近いでしょう。

風邪にしろ骨折にしろ、誰にでも起きる可能性があり、まずは病院に行って治療をして、無理せず安静にするのが大切ということです。

うつ病とは神経伝達物質が減少することで引き起こされる身体疾患

うつ病に関しては、以前も記事で症状や治療方法などを紹介しました。

詳しくは上記の記事を参考にしてもらいたいのですが簡単に説明すると、うつ病とは神経伝達物質が減少することで引き起こされる身体疾患。

原因としては、長い間続くストレスなどが知られています。

心の状態を健康に保つための神経伝達物質が足りなくなり、普段であればすぐに立ち直れるような「落ち込み」の状態からもとに戻せず、落ち込んだままになってしまうのです。

この状態続くと、食欲や睡眠欲などの欲求が減少して無気力になってしまうほか、身体がだるい、頭痛がする、あるいは発熱などの身体症状として現れることもあります。

生活習慣とうつ病の関係

今回紹介するのは、うつ病になったことがある方と、そうでない方の生活習慣を比較する研究です。

食事や運動の習慣の違いは、うつ病とどのくらい関連があるのでしょうか。

生活習慣を比較する研究の調査方法

11,876名を対象としたウェブ調査で「うつ病にかかったことがある」と答えた1,000名と、残りの10,876名を比較しました。

  • 心理的ストレスの指標である「K6テスト値」
  • 身長と体重のバランスを示す「BMI」
  • 朝食、間食、夜食の頻度
  • 軽い運動、中等度の運動、強い運動の頻度
  • メタボリックシンドローム(脂質異常症、糖尿病、高血圧の割合)

比較した内容は上記の通りです。

 

生活習慣を比較する研究の調査結果

なお朝食、間食、夜食の頻度は「まれ」「週に1~2回」「週に3~4回」「ほぼ毎日」の4段階に分けて評価しています。

また、運動の頻度は「週に何回行っているか」を評価しました。

K6テスト値の結果

K6テストとは、心の健康状態を調べるための簡単なテストです。

6種類の質問に対して

  • 全くない=0点
  • 少しだけそう思う=1点
  • ときどきそう思う=2点
  • たいていそう思う=3点
  • いつもそう思う=4点

で回答し、13点以上になると要注意となります。

震災による事故の後、東京電力福島第一・第二原子力発電所で働いていた社員の方に対して行われた結果、40%以上の方が「要注意」だったというニュースもあったので、聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

今回の調査では、うつ病にかかったことがあるグループ(うつ病グループ)は14.1点、そうでない方のグループ(対照グループ)は9.8点と、やはりうつ病グループはストレス症状が強かったことが確認されました。

BMIの結果

BMI(Body Mass Index)は、「体重(㎏)÷(身長(m)×身長(m))」で求められる数値です。

肥満・やせの指標として用いられる数値で

  • 18.5未満であれば「やせ」
  • 18.5~25未満なら「正常」
  • 25~30未満なら「過体重」
  • 30以上は「肥満」

となります。

うつ病グループの「BMI30以上」の割合は、対照グループと比較して高く、また「18.5~25未満」の正常体重の割合は、対照グループと比較すると低くなっていました。

そして18.5未満の割合はは、うつ病グループの方が高いという結果でした。

食習慣の結果

うつ病グループは「間食」「夜食」の頻度が対照グループよりも多く、逆に「朝食」の頻度は対照グループよりも少ないという結果でした。

うつ病グループでは、特に「朝食をほぼ毎日食べる」と回答した方の割合が低く、「朝食を食べる頻度がまれ」という方の割合が高くなっていました。

そして間食や夜食では、朝食とは逆に「ほぼ毎日食べる」と回答した方の割合が対照グループより多く、「まれにしか食べない」という方の割合が低くなっています。

運動の頻度の結果

中等度の運動と強度な運動に関しては、うつ病グループが対照グループよりも低くなっていました。

メタボリックシンドロームの割合

脂質異常症と糖尿病に関しては、うつ病グループの方が対照グループよりも高いという結果でした。

高血圧に関しては、差が見られませんでした。

以上の結果をグラフで示したのが、こちらの図です。

【出典】プレスリリース詳細 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

※オッズ比とは、ある事象の起こりやすさをふたつのグループで比較するための統計学的な尺度です。オッズ比が1の場合、その要因はうつ病グループと対照グループで差がないことを意味します。1より大きい場合は、その要因はうつ病の発症リスクが高いことを、逆にオッズ比が1より小さい場合は、その要因はうつ病のリスクが低くなることを示します。

この結果から、うつ病は食習慣や運動習慣、そしてそこから引き起こされると考えられる体格(やせ、肥満)や脂質異常症、糖尿病と関連があることがわかります。

うつ病の原因のひとつであるストレスは、食欲低下や食べ過ぎを招きます。

そのため、食欲低下の場合にはやせ、食べ過ぎの場合には肥満やメタボリックシンドロームを引き起こすという予想ができますね。

ここから先は「卵が先か、鶏が先か」ということになりますが、うつ病の予防として朝食をはじめとした健康的な食習慣や、適度な運動が重要である可能性があります。

食習慣や運動の習慣がうつ病を招くのか、うつ病になると食習慣や運動習慣が悪くなるのかは、今後の研究結果に期待したいところです。

うつ病を予防する栄養素

今回の研究結果では、食習慣によってうつ病が引き起こされるとは必ずしも明言できないとはいえ、なるべく健康的な食事を摂ることは悪いことではありません。

うつ病と関連する栄養素については、いくつかの信頼できるデータもありますので、その中からピックアップして紹介します。

ビタミン類

ビタミンB群は、神経を正常に働かせるために必要な栄養素です。

また、ビタミンD神経の働きに関わるカルシウムとセットで知られている栄養素

これらのビタミンは、不足するとうつ病に悪影響を及ぼすと言われています。

それぞれの栄養素を多く含む食材は、以下の通りです。

  • ビタミンB1……豚肉、うなぎ、玄米、ナッツ類
  • ビタミンB2……レバー、うなぎ、納豆、卵
  • ビタミンB6……青魚、レバー、鶏肉、納豆、にんにく、バナナ
  • ビタミンB12……貝類、レバー
  • 葉酸……ブロッコリーやほうれん草など緑色の濃い野菜、納豆、レバー
  • ビタミンD……きのこ類、魚介類

「ビタミンと言えば野菜!」というイメージはありますが、ビタミンB群は「豚肉」「青魚」「納豆」に多く含まれています。

普段の食事を振り返ってみて、魚をあまり食べていないという方はいらっしゃるのではないでしょうか?

調理が面倒……という場合は、水煮の缶詰などを活用するのもおすすめです。

なお、ビタミンB群は水溶性のため、たとえば大豆製品でも水を使って調理する豆腐より、納豆のほうが多く含まれています。

ミネラル

前述したカルシウムや、亜鉛といったミネラルも、不足するとうつ病を引き起こしやすくなると言われています。

多く含む食材は、以下の通りです。

  • カルシウム……牛乳、乳製品、魚の缶詰
  • 鉄……レバー、牛肉、魚介類、ほうれん草
  • 亜鉛……カキなどの貝類、うなぎ、牛肉、レバー、納豆

こちらでも、魚や納豆が挙げられています。

納豆は好き嫌いが分かれるところですが、苦手な方は豆乳もオススメです。

アミノ酸

必須アミノ酸であるトリプトファンメチオニンは、うつ病の改善に役立つとされています。

  • トリプトファン……牛乳、乳製品、肉類、魚介類、ナッツ類、大豆製品、卵、バナナ
  • メチオニン……牛乳、乳製品、肉類、魚介類、ナッツ類、大豆製品、卵、ほうれん草、グリーンピース

このほかにも、神経伝達と関わりのあるDHAやEPAのような「n-3系不飽和脂肪酸」も重要な栄養素です。

これらは青魚の脂肪に多く含まれる栄養素としてよく知られていますね。

今回は「青魚推し」になりましたが、魚は1日1回くらいは食べていただきたい食材。肉が中心の食生活の方にはオススメですよ!

ただし、これらの栄養だけを摂っていればOKというわけではありません。これらの栄養が不足するのはもちろんよくないのですが、他の栄養も大切です。

月並みな言い方になりますが、極端な食生活を避けて、バランスよくいろいろなものを食べるのが望ましいでしょう。

バランスのいい食事については、以下の記事の「食事バランスガイド」もぜひ参考にしてみてください。

まとめ

今回はうつ病と、食事や運動などの生活習慣、そしてそこから引き起こされる病気との関係について調査した研究を紹介しました。

まとめると、以下のようになります。

  • うつ病になったことがある方は、そうでない方に比べて、やせや肥満の割合が高いです。
  • 同様に、うつ病になったことがある方は、朝食の習慣があまりなく、間食や夜食が多い傾向にあります。また、運動の習慣もあまりありませんでした。
  • その結果、高脂血症や糖尿病の罹患率が高くなっていることがわかりました。
  • ビタミンやミネラル、アミノ酸など、不足するとうつ病に悪影響を及ぼす栄養素がありますので、普段の食事から気を付けましょう。

今回の研究では、普段の生活習慣によって、うつ病になりやすい人となりにくい人に分かれる可能性が示唆されました。

今後、さらに詳しい研究にも期待したいところです。

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